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学校跡地、共生の場に 「IKUNO・多文化ふらっと」代表 森本宮仁子さん=中川悠 /大阪

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子どもたちが集う図書館の工事が進む現場で、笑顔を見せる森本宮仁子さん 拡大
子どもたちが集う図書館の工事が進む現場で、笑顔を見せる森本宮仁子さん

 JR・近鉄の鶴橋駅から徒歩15分。観光地として人気を集めるコリアタウンに隣接する大阪市立御幸森(みゆきもり)小学校(同市生野区)が昨年3月、約100年の歴史に幕を下ろした。人口12万人を数える生野区だが少子化が進み、閉校時には1学年が10~20人に減っていた。

 「生野区には19の小学校があって、西部地域にある12の小学校を4校に再編する計画が進んでいます。御幸森小学校は、その第1号」。そう話すのは、同校の跡地を新しい拠点に再生させようと活動する特定非営利活動法人「IKUNO・多文化ふらっと」の代表、森本宮仁子(くにこ)さん(62)。

 生野区の住民は5人に1人が外国人で、約60カ国の人が住んでいると言われる。「いろいろな人が住む街は、豊かさにあふれている。みんなに愛された小学校を、多文化共生の場に変えていきたい」。森本さんたちのプランは、区役所が公募した小学校跡地活用事業に採択された。子どもたちが集う図書館の他、シェアキッチンやスポーツ施設などによる複合施設。「いくのコーライブズパーク」と名付け、オープンに向けて準備を進めている。

 森本さんはこの地で40年以上、保育園に勤務してきた。仕事を始めた時、ほとんどの子どもが在日コリアンだったが日本の通名を使っていた。日本の歌を教え、日本の保育をする現状に疑問を持った。

 「日本に暮らす子どもたちにも、母国語の大切さを伝えたい。素晴らしいルーツを持つ存在であることを知ってほしい」。森本さんは保育園で韓国語の歌を教え始めた。しかし、すぐに保護者から「子どもが韓国語で歌を歌ったら、差別をされるに決まっているだろう」というクレームが入り、差別の深さを思い知らされた。一方、子どもが母国語の歌を歌えることに喜ぶ声が、たくさん届いた。「あの時に心に決めた『民族保育』の取り組みを今も継続しているんですよ」

 森本さんは子どもの貧困、外国人差別など自治体として課題が多いからこそ、誰もが関わりあえる場所が必要だと考えている。「新しい施設では、多文化共生教育に取り組んできた御幸森小学校の思いを受け継ぎ、全国ナンバーワンのグローバルタウンを目指したい」と意気込む。

 小学校跡地に入る飲食店や事務所を構えるオフィス、その他、想いに賛同する仲間たちが集う中で、新たな問題が浮上した。エレベーターの保守点検費用、電気関係の工事など、小学校の設備を改修するためには1億円以上の追加予算が必要になる。森本さんたちは、自分たちで出せる限りを出す一方、クラウドファンディング(CF)をスタートさせた。「お金はみんなで出し合い、助け合えばいい。それよりも、豊かさが集まる場所が生まれることへの夢に、圧倒的にワクワクしています」

 少子化の中で、全国で活用方法に頭を悩ませている廃校の生かし方。今年の秋には、食、スポーツ、アート、学びなどさまざまな団体が関わる場がオープンする。生野区ならではの多様性があふれ、「誰一人取り残さない」まちづくりへのチャレンジが今、動き出している。

 CFのウェブサイト(https://camp-fire.jp/projects/view/582836)。<次回は8月26日掲載予定>


 ■人物略歴

中川悠(なかがわ・はるか)さん

 1978年、兵庫県伊丹市生まれ。NPO法人チュラキューブ代表理事。情報誌編集の経験を生かし「編集」の発想で社会課題の解決策を探る「イシューキュレーター」と名乗る。福祉から、農業、漁業、伝統産業の支援など活動の幅を広げている。

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