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概算要求基準と防衛費 議論なき「聖域化」を危ぶむ

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 防衛費の増額が独り歩きするのは危うい。巨額の借金を抱える財政状況なら、なおさらだ。

 政府は来年度予算の概算要求基準を決めた。年末の編成に向けて各省庁が具体的な要求額を提出する際のルールで、予算が野放図に膨らまないようにする狙いだ。

 だが今回、防衛費は例外扱いとされ、上限が設けられないことになった。従来は他の分野と同様に一定の枠がはめられてきた。

 背景には、ウクライナ危機を受け、政府・自民党内で防衛力の強化論が高まったことがある。

 岸田文雄首相は「防衛力を5年以内に抜本的に強化する」と表明した。相手国のミサイル発射拠点などをたたく反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有も検討している。

 自民は防衛費の国内総生産(GDP)比を1%から2%以上に上げることを念頭に大幅増額を求めている。今年度の5・4兆円から「来年度は6兆円台半ば以上にすべきだ」との声が強まっている。

 中国や北朝鮮の動向など安全保障環境の変化に応じた防衛力の整備は必要だ。しかし数値目標が先行するのは問題が多い。

 規模が優先されれば、費用対効果がはっきりしない装備を過剰に抱え込みかねない。

 要求段階で金額を示さない「事項要求」も相次ぎそうだ。金額の縛りがなければ、コスト管理も甘くなりがちだ。厳しい財政下、無駄を排する必要性が高まっているのに、逆行することになる。

 そもそも防衛費は、国の安全保障政策の基本方針「国家安全保障戦略」を踏まえ、重層的に議論することが欠かせない。だが戦略は年末まで示されず、首相は「内容、金額、財源の3点セットで議論する」と繰り返すばかりだ。

 財源の問題もある。自民内では国債発行を求める声が出ているが、将来世代の負担を重くするだけだ。第二次世界大戦では戦費調達に大量の戦時国債が使われた。その教訓を忘れるべきではない。

 第2次安倍晋三政権から、防衛費は教育や科学技術予算などの伸びを抑えて優遇され、過去最大を更新してきた。要求段階のたがも外れてしまえば、膨張に歯止めがかからなくなる恐れがある。

 議論を欠いたままの「聖域化」は筋が通らない。

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