最低賃金も岸田流? 安倍・菅内閣は政治主導演出も、効果は限定

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記者団の質問に答える岸田文雄首相=首相官邸で2022年7月29日午後7時19分、竹内幹撮影
記者団の質問に答える岸田文雄首相=首相官邸で2022年7月29日午後7時19分、竹内幹撮影

 2022年度の最低賃金の引き上げ幅(目安)を31円とすることが決まった。目安通りに引き上げられれば全国平均で961円となる。大幅な引き上げの決め手となったのは、ウクライナ危機などによる物価高だ。働く人、そして新型コロナウイルス禍にも苦しむ中小企業への影響は。【奥山はるな、小鍜冶孝志、石田奈津子】

 「今年は丁寧な議論が必要であることと、目安額の根拠についても納得できるものが欲しいという意見が出ていることを踏まえ、再度検討する時間が必要だ」。後藤茂之厚生労働相は7月29日の閣議後記者会見で、最低賃金の目安額が決定していない事情をこう説明した。詰めの協議を行った25日以降、具体的な協議は行わず、労使代表や有識者委員のほか、厚労省も含めた水面下の調整を進めていた。

 最低賃金の目安は例年、7月中旬~下旬に決定している。7月14日に決まった昨年は、過去最高額の引き上げにこだわった菅義偉前首相の存在が大きく影響した。コロナ下での引き上げに抵抗する経営者側の反発を抑え、異例の採決を実施。過去最大の28円引き上げを全国一律で実現させたからだ。当時を知る厚労省幹部は「前回は衆院選前で選挙も意識しており、箸の上げ下ろしまで官邸に縛られた」と振り返る。

 こうしたやり方に労使代表が反発したことに加え、昨年秋に岸田文雄政権が発足したことで、今回は様相が大きく変わった。最低賃金がテーマとなった5月20日の「新しい資本主義実現会議」で、岸田首相が「(最低賃金の)引き上げ額について、最低賃金審議会でしっかりと議論していただきたい」と述べ、首相官邸として直接的な介入を控える方針を表明した。安倍晋三元首相や菅前首相のような手法は取らず、与党や霞が関など周囲の意見を吸い上げる岸田首相らしい「ボトムアップ型」といえる。議論が長引く背景となった。

 政治主導を演出してきたのは、12年12月の第2次安倍内閣以…

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