点字ブロックの大きすぎる「盲点」 視覚障害者の9割に思い至らず

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福井市の「フェニックス通り」に敷設された道と同系色の点字ブロック=福井市で2022年6月17日午後2時11分、国本ようこ撮影
福井市の「フェニックス通り」に敷設された道と同系色の点字ブロック=福井市で2022年6月17日午後2時11分、国本ようこ撮影

 視覚障害者の歩行の助けとなる点字ブロック。4月には奈良県大和郡山市の踏切内のブロックが摩耗して一部がはがれ、全盲の女性が電車にはねられ亡くなる事故が起き、改めて重要性がクローズアップされた。事故を受け、踏切内に横断歩道などに使う特殊な点字ブロック「エスコートゾーン」が設置されるなど改善が進む。

 一方で、当事者団体によると、点字ブロック設置を巡っては視覚障害者の9割に影響があるにもかかわらず、「見落とされがちな大きな問題」があるという。それは何なのか。現場を取材した。【国本ようこ】

歩道に「なじむ」点字ブロック、あちこちに

 福井市中心部。福井県庁に通じる県道の歩道には、中央に点字ブロックがきれいに敷設されていた。歩道の灰色タイルと同じ色・模様のブロックで調和が取れているようにも見える。しかし、同市で暮らす弱視の70代女性は「道と同系色の点字ブロックは歩きにくい。改善してほしい」と訴える。視力は色や明暗がぼんやりわかる程度。知らない場所を歩くときは白杖(はくじょう)を使いながら、目からの情報も頼りにしているという。

 日本視覚障害者団体連合によると、点字ブロックは1967年に岡山市の盲学校近くの交差点に世界で初めて敷設された。その後、全国に広がっていったが80年代ごろから景観意識の高まりもあり、街や道路のデザインを優先し、歩道となじむ同系色のブロックが使われる例が全国的に増えたという。ブロックの凹凸より色を頼りに歩く人も多い弱視者から「歩きにくい」との声も上がるが改善は進んでいない。

 意識して街を歩くと、福井市中心部では市電が走り、繁華街に近い県道の通称「フェニックス通り」沿いの歩道で、歩道に色味が近い薄いピンクのブロックが敷かれていた。2024年春に北陸新幹線が延伸される予定で再開発が進むJR敦賀駅(同県敦賀市)近くの県道沿いでも見つかった。

 多くの人が行き交う場所に、弱視者が見分けにくい点字ブロックが使われたままとなっていることに違和感を覚えた。なぜ改善が進まないのか。冒頭に挙げた県庁前の歩道を管理する福井県道路保全課は「整備当時は原則黄色と定められていなかった」と説明する。

 点字ブロックといえば「黄色」を思い浮かべる人が多いだろう。85年に建設省(現国土交通省)の指針で「原則として黄色」とされ、00年施行の交通バリアフリー法下の省令で「原則黄色か周囲の路面との(明暗のコントラストを示す)輝度比が大きく容易に識別できる色」と定められた。06年施行のバリアフリー新法下でも踏襲されているが、守らなくても罰則がなく、見やすさの配慮は道路管理者に委ねられているのが実情だ。

 同課は「今のところ、市民や団体から改善要望はなく、再整備の予定はない」としている。しかし、点字ブロックの整備などを担当する国土交通省道路局企画課は「そもそも色を決めているのは、弱視の方にとって輝度比が小さいとブロックが認識しづらいため。要望の有無に関わらず、古い道路でも基準に適合させる努力義務があり、整備することが望ましい」との見解を示した。

高齢になり増えてくる「見えづらさ」

 「同系色のブロックは、視力が低下した高齢者にとっても危険だ」と指摘するのは日本視覚障害者団体連合の三宅隆組織部長(49)。同連合には高齢者からも「建物内でグレーの床にグレーの点字ブロックが敷かれていて、気付かず足を滑らせた」との声も寄せられるという。「ほぼ毎年、全国各地から改善を求める声が上がっている。弱視の人もブロックの存在を認識できなければ敷設の意味がない」と訴える。

 そもそも、見えづらさを抱える人はどれくらいいるのか。日本眼科医会によると、09年公表の調査で、障害者手帳を取得していない人も含めた視覚障害者数は、約164万人(07年時点)。そのうち、失明していないが左右で良い方の矯正視力が0・5未満の「ロービジョン」の人は約145万人で、全体の約9割に上る。高齢になり病気などで目が見えにくくなる人も多いという。当時の予測値では、全体の視覚障害者数は20年に197万人、30年で201万人に達するとしており、日本視覚障害者団体連合は「高齢化などにより全体の数は増えている」とみている。

視覚障害者は「全盲」だけじゃない

 各地に多数残る「見分けにくい」点字ブロックだが、当事者団体の積極的な働きかけで改善が進んだ例もある。…

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