寄稿

芥川賞を受賞して 花盛を前に実感まだ=高瀬隼子(作家)

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芥川賞に選ばれ、記念撮影に応じる高瀬隼子さん=東京都千代田区で2022年7月20日午後7時17分、関雄輔撮影
芥川賞に選ばれ、記念撮影に応じる高瀬隼子さん=東京都千代田区で2022年7月20日午後7時17分、関雄輔撮影

 芥川賞受賞の実感がわかないまま、2日が経(た)った朝7時半。わたしはまだ寝ていた。その日の出勤には8時に起きれば間に合う計算だった。朝が弱いので、1分でも長く布団の中に入っていたい。ピンポン、とインターフォンが鳴った。1回目は無視したが、2回目のピンポンでうっすら目を開けた。枕元のスマートフォンで時間を確認し、重たい体を引きずって立ち上がった。インターフォンの白黒のモニター画面いっぱいに、花が映っていた。

 「祝 第167回芥川賞」と書かれた木製のプレートが刺さった、どでかい花盛だった。花盛という言葉が正しいのだろうか。フラワーアレンジメントだろうか。一般家庭では見たことのない巨大な花瓶に、色とりどりの花や草がもりもりに盛られている。大型犬3頭分くらいの大きさで、高さは立ち上がったわたしの首の辺りまである。マンションの玄関前まで届けてくれた花屋さんにお礼を言い、部屋の中へ運ぼうとしたら、重すぎて持ち…

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