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新型コロナウイルスとの夏も3度目です。ウイルスの特性も当初に比べて解明は進み、ワクチンや治療薬も実用化が進んでいますが、それでも日々、安心とはほど遠い中で生活しています。こうした中、国の審議会で下された一つの判断について、じっくり考えてみたいと思います。【くらし医療部・横田愛】
感染拡大はどこまで続くのか。混み合う電車の中、昼食で立ち寄る店、「どこかで感染するのでは」と気が気でない。思えば昨夏も極度の緊張感の中にいた。秋には下火になったが、年初に急増。春には落ち着きを取り戻したものの、7月以降かつてないペースで感染者数が増えている。
まるでジェットコースター。違うのは上り坂の方が怖い、というぐらいか。
7度目の上り坂の途中、7月20日夕に開かれたのが、塩野義製薬が開発した新型コロナ飲み薬「ゾコーバ」への緊急承認の適用を巡る厚生労働省の薬事分科会などの合同会議だった。
審議は2時間超、薬事審査では異例のことだが「ユーチューブ」で中継された。一時は数千人が視聴。関心の高さが伺えた。
緊急承認は、ワクチンの実用化の遅れなど一連の新型コロナ対応の反省から新設された制度だ。臨床試験(治験)が終わる前でも、一定の条件を満たせば実用化の道を開く仕組みで、ゾコーバがその「審査第1号」だった。だが、合同会議では「有効性を示すデータが不十分」との意見が多数を占め、適用は見送られた。
会議後に顔を合わせた厚労省幹部は苦い表情だった。「第7波もあるし、社会的ニーズの議論がもうちょっと出るかなと思っていたんだが……」
「緊急承認見送り」との結論に、世の中の評価は真っ二つに割れた。「妥当な判断だ」「何のための緊急承認制度なのか」。SNS(ネット交流サービス)は百家争鳴の状態だった。
この成り行きをどう見たらいいのか。…
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