里山の暮らし、調べにのせて 三重拠点の歌手、Chojiさん

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自宅の庭で開いたコンサートで歌うChojiさん=津市美杉町竹原で2022年6月19日、斎藤良太撮影 拡大
自宅の庭で開いたコンサートで歌うChojiさん=津市美杉町竹原で2022年6月19日、斎藤良太撮影

 三重県津市美杉町竹原の古民家を拠点に活動するシンガー・ソングライターのChoji(チョージ)さん(46)が、今年5月、アルバム「ノアガリヒマチ」を発表した。収録した9曲の多くが、「美杉里山音楽舎」と名付けた自宅の土蔵でレコーディングしたもの。美杉の里山の風景や、そこに暮らす人々の営みを、アコースティックな調べにのせて情感豊かに歌い上げた。【斎藤良太】

 2017年6月、美杉に移住した。翌年から妻の村田宏美さんと、自宅前の小さな田んぼで稲作を始め、試行錯誤しながら田植えを終えた時、近所の人から「あんたらえらかったなあ。ノアガリヒマチやなあ」とねぎらわれた。

 三重の農家では、田植えや収穫の後に休むこと「野上(のあ)がり」「日待(ひま)ち」と呼ぶが、「野上がり日待ち」と二つをつなげるのは、竹原地区独特の言い回しという。この体験を歌につむぎ、かけられた言葉を新作のタイトルにもした。ほかの曲も、茶作りなどの様子を描いたり、地区で歌い継がれる盆踊り歌をアレンジしたりと、地域に根ざしたものばかりだ。

 昨秋から始めたレコーディングでは「風景や住む人の雰囲気も感じながら音を入れてもらいたい」と、ミュージシャンやエンジニアを呼び寄せた。近所の住民も、曲間のセリフや「合いの手」の収録に参加してもらった。「この土地の音や声、景色を、民俗資料として50年後、100年後に残したい」との思いがあったからだ。

自宅の庭で開いたコンサートで歌うChojiさん=津市美杉町竹原で2022年6月19日、斎藤良太撮影 拡大
自宅の庭で開いたコンサートで歌うChojiさん=津市美杉町竹原で2022年6月19日、斎藤良太撮影

 大学在学中から音楽活動を始めて、今年で25年になる。出身地の横浜市を拠点に全国各地でライブを重ねるうちに、旅先で自身が感じたことやその土地の風土や人の暮らしを歌にするスタイルにいきついた。

 転機が訪れたのは11年。和歌山県高野町の筒香(つつが)地区に移住した友人の依頼で、耕作放棄地再生プロジェクトに関わった。音楽で協力できればと軽い気持ちだったが、美しい里山の風景に魅了され、稲作を手伝うため夫婦で月1回、通うほどに。稲作と里山への関心が今まで以上に高まっていった。

 美杉に移住するきっかけは偶然だった。16年11月、美杉町内のイベントに招かれ、その打ち上げの席で「空き家があるけど見てみない?」と持ちかけられた。父の実家を管理するため13年から三重県松阪市に拠点を移していたが、美杉を訪問したのはこの日が初めて。面食らったが、翌日に案内されたのは、土蔵と離れが付いた築150年の古民家。家の前には区画整理されていない昔ながらの田んぼが広がっていた。「何となく気に入っちゃって、それからあれよあれよと話が進んで…」。半年後には暮らし始めていた。

 当初は、音楽活動の合間に自家用米を無農薬で栽培できれば十分、と思っていた。しかし家から見える景色を田んぼにしようと休耕田を借りていくうちに、栽培面積は約20アールに拡大。さらに新型コロナウイルス禍によるツアーの中止で自宅にいる時間が増えたこともあり、今は約20アールの茶畑も手がける。

水田の除草作業をするChojiさん。無農薬栽培なので、草取りは全て手作業だ=津市美杉町竹原で2022年6月24日、斎藤良太撮影 拡大
水田の除草作業をするChojiさん。無農薬栽培なので、草取りは全て手作業だ=津市美杉町竹原で2022年6月24日、斎藤良太撮影

 春の「野上がり」や秋の収穫期などには、自宅前の田んぼをステージにライブを開いている。関東や関西などからファンが訪れ、近隣住民が、駐車場への誘導や受付役などを買って出てくれる。それが新たな交流と出会いの場にもなっている。今年7月には、美杉を題材にしたアルバムの完成を地元の人にも聞いてもらおうと、美杉町内旧7カ村で無料コンサートを開いた。

 美杉で暮らし始めるにあたって、何か目標を立てたり、覚悟を決めたりしたという意識はなかったといい「全部、流れなんでしょうか」と笑う。これからもここに住み、日々の暮らしに根付いた曲を作り歌い続けていくつもりだ。

ちょーじ

 本名は村田智則。「Choji」は、元プロ野球ロッテの村田兆治投手にちなんで子どもの頃に呼ばれたニックネームから取った。コンサートなどの活動情報や、新作のメーキング映像などはオフィシャルホームページ(http://choji.jp)に掲載している。

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