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飯島洋一・評 『人種主義の歴史』=平野千果子・著

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『人種主義の歴史』
『人種主義の歴史』

 (岩波新書・1034円)

大航海からひもとく差別と暴力

 「人種というのが文字通り、人の種を表すのであれば、本書では人間の種は一つであり、その意味で基本的に『人種はない』」と著者は書く。だが人の種が一つなら、人種主義がなぜ問題になるのか。

 著者はその問い掛けに「『人種』には実体がなく、社会で使われることで作り上げられるものである」と答える。「『人種』とは神話」となるが、それでも人間はこれまで「見た目の相違や言語、文化などといった社会的・文化的要因から、人種概念が作り上げられて」きた。本書は、その人種主義の歴史を大航海の時代まで遡(さかのぼ)り論じている。

 大航海にまで遡る理由は、この言葉がヨーロッパの言語に由来し、大西洋の向こう岸の自分たちと異なる他者に遭遇したことと、「人種問題」とが大きく繋(つな)がっているからだ。そして1492年に内部の他者を制圧したヨーロッパ社会による「海外進出の歴史はこの時代から一九世紀末の帝国主義時代まで」、「その手法は大きくは変わらずに行われた」。

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