特集

旧統一教会

安倍元首相銃撃事件を機に世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に改めて注目が集まっています。

特集一覧

旧統一教会と自民党の接近 政治家に見る“脇の甘さ”

  • ブックマーク
  • 保存
  • メール
  • 印刷
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)が2000年ごろに3000万円で信者に購入させた聖本。「霊界で会った人たち」の章に岸信介元首相の名前が書かれていた=東京都千代田区で2022年7月22日、幾島健太郎撮影
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)が2000年ごろに3000万円で信者に購入させた聖本。「霊界で会った人たち」の章に岸信介元首相の名前が書かれていた=東京都千代田区で2022年7月22日、幾島健太郎撮影

 安倍晋三元首相が銃撃され死亡した事件をきっかけに、宗教団体・世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と自民党議員を中心にした政治との関係が取り沙汰されている。作家で宗教学者の島田裕巳さんに聞くと、戦後、「反共産主義」を旗印に旧統一教会と自民党が接近したことや、日本の「政教分離」にある曖昧さを指摘。その上で、教会側の思惑をきちんと認識せずに付き合う政治家の“脇の甘さ”や“ルーズさ”に警鐘を鳴らした。【大野友嘉子】

政教分離「当たり前」ではない

 「日本の10大新宗教」(幻冬舎新書)や「創価学会」(新潮新書)などの著書がある島田さん。日本で政教分離が当たり前の価値観と捉えられがちなことについて、こう指摘する。「政教分離が世界のスタンダードかというと、それは違います。例えば、英国国教会を持つ英国、イスラム教を国教としているイスラム諸国があります。国教を禁じている国でも、実際には公的行事に宗教色が全くないわけではありません」

 確かに、国教がない米国でも、大統領が就任する際に神に宣誓するのが慣例となっており、公的行事にキリスト教色がにじむ場面が度々見られる。

 他方、厳格に政治と宗教を分けているのがフランスだという。「非宗教性」「世俗性」などと訳される「ライシテ」と呼ばれる積極的な政教分離政策を原則としている。カトリック教会と結びついた王制を革命で倒した歴史から、憲法で「非宗教的」な国家と規定し、公共の場には宗教を持ち出さないという厳格な決まりがある。1989年に公立学校でイスラム教徒の女子生徒がスカーフをかぶって教室に入ろうとし外すように言われたことで論争が起きたが、その後も公立学校で着用は禁止されている。

 日本の場合、海外を基準にすると、政教分離に対して厳格な姿勢を保っている方だという。「フランスほどではありませんが、戦時中に国家神道の下に侵略を行った経緯から、政治と宗教を切り離すべきだと憲法20条で規定しており、そうした価値観が人々の間に浸透していると言えます」

政教分離議論 保革対立も背景に

 島田さんは、日本で「政教分離」の議論がされてきた背景に、戦後の保守と革新勢力の対立があったとも指摘する。

 第二次世界大戦の終結から間もなく、幕が開けた東西冷戦。ソ連と中国などが共産主義国家として西側諸国と対立し、日本でも共産主義が脅威とみなされた。その時代に反共の旗印の下、韓国で創立された旧統一教会と、同教会が68年に設立した政治団体・国際勝共連合が安倍氏の祖父・岸信介元首相を中心とした自民党議員に接近したことは、銃撃事件をきっかけに報道されており、島田さんも言及した。当時は、反共を掲げる他の新興宗教団体も自民党の支援に回っていた。こうした動きに対し、共産党や旧社会党など左派勢力は「政教分離を武器にして対抗した」という。

 さらに、公共施設の起工式(地鎮祭)を神式で行って公金を支出したことは違憲として共産党の市議が提訴した「津地鎮祭訴訟」(77年に最高裁が合憲判決)や、過去の首相らの靖国神社への参拝を巡る論争に触れ、島田さんは説明する。

 「共産党(や旧社会党)は、憲法20条(政教分離)と89条(宗教団体への公金支出禁止)の徹底を図ったのです。首相の靖国参拝に関しては、私人としての参拝なのか、公人としてなのかが議論されるようになりました。85年に中曽根康弘元首相が公式参拝を強行すると、外交問題にまで発展し、首相による参拝は(96年の橋本龍太郎元首相まで)長らく見送られることになりました」

 日本の政教分離には、曖昧なことも多いと言う。「首相の靖国参拝は代表的な例です。他にも、三権の長である衆参両院議長らが皇室の祭祀(さいし)行事に参加したり、首相が年始に伊勢神宮を参拝したりしますね。これらも含め、政教分離について、今回の事件を契機に議論が深まればいいと思います」

「反共」と“利権”でつながり

この記事は有料記事です。

残り1710文字(全文3318文字)

【旧統一教会】

時系列で見る

関連記事

あわせて読みたい

マイページでフォローする

この記事の特集・連載
すべて見る
この記事の筆者
すべて見る

ニュース特集