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ウクライナ侵攻

ロシア軍がウクライナに侵攻。米欧や日本は対露制裁を決めるなど対立が先鋭化しています。

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「プーチンの部隊」選んだロシア正教会 侵攻支持、与える権威

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対独戦勝記念式典に出席したロシア正教トップのキリル総主教=モスクワで2022年5月9日、前谷宏撮影
対独戦勝記念式典に出席したロシア正教トップのキリル総主教=モスクワで2022年5月9日、前谷宏撮影

 隣国ウクライナへの侵攻に踏み切ったロシアのプーチン大統領は、何のために戦っているのか。その世界観や背景を探る連載の最終回は、武力行使を批判しないロシア正教会を取り上げる。なぜ人をあやめることを禁じる教会が隣国への侵攻を支持するのか。

 「神よ、我らの兄弟であるウクライナの政治状況が、ルーシの団結をいつも阻もうとする邪悪な勢力の勝利に向けられることを許したもうことなかれ」

 ロシア正教会トップのキリル総主教(75)はウクライナ侵攻開始から3日後の2月27日、モスクワの救世主キリスト大聖堂での説教でそう祈った。

 ルーシはロシアの古名だ。9世紀ごろに建国したとされるキエフ・ルーシ(キエフ大公国)はロシア、ウクライナ、ベラルーシの東スラブ系民族のルーツとされ、10世紀に当時の大公がキリスト教の洗礼を受けたことが3民族が正教を受け入れる起源となった。

キリル総主教、欧米批判を繰り返す

 「聖なるルーシ」の団結を説くキリル氏は同じルーシを構成するウクライナへの侵攻を真正面から支持することはない。だが、ウクライナの「迷える者」に神の光が差すことを祈り、欧米諸国を念頭に兄弟民族の仲を裂く「外部の敵対勢力」を繰り返し非難する。

 3月には「世界権力を主張する」勢力が「ゲイ・パレード」を押しつけようとしていると訴え、ウクライナ東部の親露派武装勢力の支配地域に暮らす人々がこうした価値観を拒否してきたと称賛しながら、ウクライナで起こっていることを「人類の救済」に例えた。

 世界的な宗教指導者でありながら、間接的に侵攻を正当化するような教えを説くキリル氏。その態度は国際的な非難を呼び起こした。「キリル氏はプーチン氏の軍事作戦をウクライナの精神的浄化や宗教的十字軍と等しく扱っている」。ブリュッセルに拠点を置く国際人権NGO「国境なき人権」は4月、キリル氏が戦争犯罪をあおり立てているとして、国際刑事裁判所に起訴することを呼びかけた。

 カトリックのフランシスコ・ローマ教皇も5月、キリル氏とオンライン会談を実施。「プーチン氏の従者になるべきではない」と話したことを伊メディアの取材に明かした。英国やカナダ政府も6~7月、キリル氏の侵攻支持の姿勢を問題視し、個人制裁を科した。

KGBに協力疑惑、プーチン氏を称賛

 ロシア正教会はソ連時代、無神論を掲げる共産党政権の弾圧を受けたこともあり、多くの宗教指導者は政権への協力を強いられた。教会の渉外部門での勤務が長いキリル氏も、ソ連の情報機関・国家保安委員会(KGB)の工作員として国外の情報…

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【ウクライナ侵攻】

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