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日本に近づく超大型台風の勢力を弱め、被害を未然に防ぐ――そんな夢のような話が実現するかもしれない。2050年までに台風を人為的に制御することを目指すプロジェクトが今年始まった。いったいどんな研究なのか。
台風ができるメカニズムはこうだ。
暖かい海で低気圧ができると、風が吹き込んで内部に水蒸気が送られ、上昇気流に乗って上空で凝結し、積乱雲ができる。水が凝結すると多くの熱が放出され、暖められた空気が膨張してさらに気圧が下がり、上昇気流が強まる。これが繰り返され、台風に発達するのだ。
台風は熱帯域から温帯域へエネルギーを輸送する地球上の重要なシステムだ。暖かい空気を運んで気温を平準化したり、強い風で海をかき混ぜて海水温を下げたりする。水不足の解消にも欠かせない。
一方、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によると、地球温暖化で異常気象の発生頻度が高まり、過去40年で台風などの熱帯低気圧はより強いものの比率が高まっている。日本でも台風による経済的被害は年々増えている。
激甚化する台風の発達を少しでも抑え、被害を軽減できないか。そんな研究に取り組むのが、筆保(ふでやす)弘徳・横浜国立大教授(気象学)だ。
米国では制御に挑戦も
どうやって制御するのか。筆保さんによると、以下の三つの例が挙げられる。
①台風の目を囲む「壁雲」の外側に、人工降雨にも使われる「ヨウ化銀」をまいて雲を作り、台風本体に水蒸気が送り込まれるのを防ぐ②周りの海水温を下げ、水蒸気の供給量を減らす③台風の目の中に氷をまいて冷やす。
実は、台風制御は1962年施行の災害対策基本法に記されてい…
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