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走行中の電車内で乗客が襲われるなど、鉄道車内での凶悪事件が相次いでいます。もしトラブルに遭ったら、どう対処すればいいのでしょうか。鉄道各社や専門家に取材しました。【大平明日香】
不審者に遭遇したら
列車内で刃物を振り回すなど危険な人物を見かけたら、別の車両に移るなど、まずは自分の安全を確保したうえで次の行動を取ってください。
・非常通報装置を押す…鉄道会社は非常通報装置を各車両に設置しています。設置場所はドアの横、車両と車両の連結部などです。「SOS」と赤いマークが表示されているケースが多いので、ためらわずに使ってください。
・非常通報装置で乗務員に連絡…非常通報装置は乗務員と通話できるタイプが多いので、「何両目で〇〇が起きています!」などと簡潔に伝え、乗務員の指示に従ってください。通報装置を押しただけでその場を離れると、乗務員に事態の内容が伝わらないので注意してください。
・110番、119番通報…状況が深刻な場合は警察や消防にも通報してください。警察官や救急隊が現場に急行したり、停車予定のホームで待ち構えたりすることができます。
・火災時は消火器の使用も…火災が起きたら、まずは火元から離れてください。車両の床や天井、座席などは燃えにくい素材が使われているので、油などをまかない限り、すぐに燃え広がることはありません。また、全車両には消火器が設置されており、初期消火に利用できます。
勝手に車外に出ない
各車両のドア付近には非常ドアコックがありますが、自分の判断で操作して車外に出るのはとても危険です。線路に落ちたり、隣を走る列車にぶつかったりする恐れがあります。地下鉄の場合は、近くに高圧電線が通っています。非常ドアコックは乗務員の指示に従って操作してください。
東京メトロの担当者は「むやみに車外に出るのは危険なだけでなく、他のお客様の避難を妨げる恐れもあります。トラブルが起きた場合は、できる限り最寄り駅まで運転し、駅に到着後に乗務員や駅員が避難誘導に当たります」と話しています。
2021年10月、東京都調布市を走行中の京王線車内で乗客十数人が刺されるなどした事件では、緊急停車した駅での停車位置がずれたためホームドアが開かず、多くの乗客が窓からホームに脱出しました。
この事件を受け、国土交通省は列車のドアとホームドアの位置がずれていても、「双方を開けて安全に誘導することが基本」と鉄道各社に指示を出しました。ただ、大きくずれている場合は危険性が増し、車椅子などが通りづらいといった課題もあります。
防犯カメラの設置進む
相次ぐ事件を受け、国交省は列車内に防犯カメラの設置を義務づけるなどの対策を検討しています。設置率は鉄道会社によってまちまちですが、JR東日本では、新幹線と首都圏を走る在来線の全車両で設置が完了しています。
また国交省は、鉄道会社が乗客の手荷物検査をできるよう、21年に省令を改正しました。不審者を絞った上での実施を想定しています。飛行機のような恒常的な荷物検査は「列車の本数や検査スペース、鉄道の輸送性などを考慮すると現実的ではない」(JR東日本)として行われていません。
自分の身は自分で守る意識を
鉄道のセキュリティー対策に詳しい板橋功・公共政策調査会研究センター長は「不特定多数の人がチェックなしで乗っている列車を安全だと考えるべきではない」と警告しています。
イヤホンを大音量にしたり、ノイズキャンセリング(周囲の騒音を低減する)機能を使ったりして音楽を聴いている人は、異変があっても気づかずに逃げ遅れる危険があるそうです。スマートフォンのゲームなどに夢中になっている人も同様です。
板橋さんは「不審者を見かけたら別の車両に移ったり、次の駅で降りたりすることも必要だ。乗車中はなるべく周囲に注意を払い、自分の身は自分で守るという意識を持ってほしい」と呼び掛けています。
列車内で発生した近年の主な事件
・2015年6月、東海道新幹線の新横浜―小田原間で男性が焼身自殺を図り、巻き添えになった女性1人が死亡、28人が負傷
・18年6月、東海道新幹線の新横浜―小田原間で男性が乗客に刃物で切りつけ、男性1人が死亡、2人が負傷
・21年8月、東京の小田急線成城学園前―祖師ケ谷大蔵間で男性が乗客に刃物で切りつけ、10人が負傷
・21年10月、京王線布田―国領間で男性が乗客を刃物で刺し、油をまいて放火、17人が負傷