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政府の財政試算 成長頼みでは立て直せぬ

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 いつまでも現実離れした高成長を当てにしていては、借金漬けから脱却できない。

 政府は半年に1回の財政試算を公表した。「基礎的財政収支」と呼ばれ、社会保障や公共事業などの毎年度の収支を示す指標だ。

 新型コロナウイルス禍に伴う経済対策などの影響で今年度は40兆円もの赤字となる。だが試算では、税収の大幅増で赤字が急速に縮小するという。2025年度に黒字化する目標も達成可能と、これまでと同様の見方を示した。

 名目で3%の高い成長が続くというのが税収増の根拠だ。看板政策の「新しい資本主義」の効果が表れると見込んでいる。

 だが、これほどの好景気はバブル期以来実現していない。コロナ禍による少子化の加速に加え、物価高にも直面している。高成長どころか、停滞が長引きかねない。

 成長率が0%台という実態に即した試算も公表された。その場合、25年度の赤字は6兆円超に上り、黒字化には程遠い。

 しかし、岸田文雄首相はこの試算を使う考えはない。成長を優先した安倍晋三元首相の路線を踏襲しているからだ。

 安倍政権は予算の大盤振る舞いを続け、その結果、黒字化目標を5年も先送りしてしまった。甘い想定に固執していると、歳出抑制はおろそかになるばかりだ。

 来年度予算も規模がさらに膨らむのは必至だ。各省庁の要求に枠をはめる概算要求基準では、防衛費や脱炭素、少子化対策などが例外扱いになった。歳出全体の上限も設けられなかった。

 今年の「骨太の方針」でも政府は黒字化時期を明記しなかった。目標撤回を求める自民党の積極財政派の主張に抗しきれなかった。

 暮らしに関わる分野への支出は必要だが、財政規律を緩めていいわけではない。不要不急の事業削減を徹底しなければならない。

 国と地方が抱える借金残高は総額1200兆円に上る。毎年度の収支を黒字化できなければ、巨額の借金を減らすめども立たない。

 25年度には団塊の世代が全員75歳以上になり、社会保障費が急増する。将来へのつけが膨らむ一方では、超高齢社会を乗り切れなくなる。説得力ある財政健全化の道筋を示すのは首相の責務だ。

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