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「戦争」が脅かす脱炭素 環境先進国ドイツのジレンマ

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LNG受け入れ基地の建設現場=ドイツ北部ウィルヘルムスハーフェン沖で2022年5月5日(ⒸBMWK/Bundesfoto)
LNG受け入れ基地の建設現場=ドイツ北部ウィルヘルムスハーフェン沖で2022年5月5日(ⒸBMWK/Bundesfoto)

 レンガ造りの家並みを吹き抜ける海風が、潮の香りを運ぶ。北海の湾に面したドイツ北部ウィルヘルムスハーフェン。この港町の沖合数百メートルで今、政府計画による国内初の液化天然ガス(LNG)受け入れ基地の建設が急ピッチで進む。米国などからタンカーで運ばれるLNGを取り込み、再ガス化する浮体式ターミナルで、年内にも稼働予定だ。

 この工事に複雑な思いを抱く男性がいる。近くに住む中学教師のアレクサンダー・フォンフィンテルさん(51)だ。「再生可能エネルギーへの転換を進め、LNGからはなるべく早く手を引くべきです。ですが、ロシア産天然ガスを輸入してプーチン(露大統領)に戦争の資金を提供するくらいなら、今は他国からLNGを買う方がいいのかもしれません」

 フォンフィンテルさんは近く、「緑の党」から地元の州議会議員選挙に出馬を予定している。「環境先進国」ドイツの中でも、時に過激なまでの環境重視政策で知られる党だ。ロシアのウクライナ侵攻は、そんな立場の人にすら「迷い」を生んだ。

「旗振り役」が化石燃料回帰

 ドイツは気候変動問題を主要7カ国首脳会議(G7サミット)の中心議題として取り上げるなど、世界の脱炭素をリードしてきた。早ければ2030年までの脱石炭を目指し、風力や太陽光などの再生エネの利用を拡大。総発電量に占める化石燃料の割合は00年の63%から20年には43%に減少する一方、再生エネは7%から45%に急増し、逆転した。21年には、二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガス排出を実質ゼロにする目標について、従来より5年前倒しし「45年までに」とする方針を示した。

 この問題に対する国民の関心も高く、政治の動きを後押ししてきた。21年秋の総選挙では、移民や新型コロナウイルスなどの問題を抑えて、気候変動対策が最大の争点となったほどだ。

 そのドイツが、ウクライナ侵攻を受け、一転して脱炭素に逆行するともとれる動きを見せている。ドイツも参加する経済制裁に反発したロシアが、パイプラインによるドイツへの天然ガス供給を大幅に減らしたことが背景にある。ドイツは世界有数の天然ガス輸入国で、55%(21年)はロシアに頼っていた。ガスの供給不足に陥れば、国民の生活や産業に大きな影響が出る。再生エネを急に増やすことはできず、化石燃料への新規投資を選ばざるを得ない。

 ドイツは北部に複数のLNG基地の整備を進めているが、…

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