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国内外の異なる部署で取材する14人の中堅記者が交代で手がけるコラム。原則、毎日1本お届けします。

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銃撃事件で「全国区」に 祈り、悩む”あの寺”の僧侶たち

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安倍晋三元首相の銃撃現場に砂をまく西大寺の僧侶=奈良市で2022年7月12日午後2時11分、塩路佳子撮影
安倍晋三元首相の銃撃現場に砂をまく西大寺の僧侶=奈良市で2022年7月12日午後2時11分、塩路佳子撮影

 間もなくお盆。私が住む奈良の町でも、お坊さんたちが慌ただしげにバイクで走り回る姿を目にする季節です。「14色のペン」の書き手のうち唯一の大阪本社勤務記者として、関西に色濃く残る歴史、文化の味わいを感じていただけるようなコラムを目指します。【大阪学芸部・花澤茂人】

 奈良は最近、何となく沈んだ空気の中にある。知人と顔を合わせれば「どうにも気が重い」というのが合言葉のようになっている。酷暑や長引く新型コロナウイルスの影響もあるだろうが、やはり7月の安倍晋三元首相の銃撃事件の影響が大きい。政治信条にかかわらず、住み慣れた町で起きたという衝撃がずっと胸に残っている人が多いのだと思う。「大好きな奈良という地が事件と結びつけて歴史に刻まれるのが悲しい」という声も聞く。

 その意味で最も大きな影響を受けたのは、「西大寺」かもしれない。事件の報道で何度も耳にした覚えがあるだろう。現場近くにある近鉄「大和西大寺駅」にその名を刻む、真言律宗の総本山だ。

 奈良時代に称徳天皇の発願で建立され、数々の国宝や重要文化財を伝える歴史ある寺院。しかし東大寺や興福寺など世界遺産が多く建ち並ぶ奈良ではその知名度も今ひとつで、市民でも「駅名としか思っていなかった」という人は少なくない。それが今回、思いがけずその名を全国にとどろかせることになってしまった。

 「最初は『関わりない』と思ったんですわ」。西大寺の辻村泰範(たいはん)執事長(74)はあの日午後、寺に駆けつけた宗教専門紙の記者に問いかけられ、とっさにそう答えたという。「『すぐそばで事件が起こり、どうですか』って。どうですかって言われても、境内で起きたことでもないし」。しかし時間がたち、徐々に胸がざわつき始めた。…

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