できないことが役に立つ ヨシタケシンスケさんが極めた「後ろ向き」
- ツイート
- みんなのツイートを見る
- シェア
- ブックマーク
- 保存
- メール
- リンク
- 印刷

日常の一コマから奇想天外なへりくつまで。絵本作家・ヨシタケシンスケさんが描く世界は、子どもから大人まで多くのファンをひきつけている。ところがヨシタケさん、実は根っからネガティブで、「すぐ自分のことも世の中のこともイヤになっちゃう」タイプなんだそう。デビューから約10年。ヒット作を連発し、さまざまな賞に輝いても、「自己肯定感はずっと低い」。しかしそのネガティブさこそが、唯一無二のヨシタケワールドを生んだカギでもあるようで……。
自身初の大規模個展「ヨシタケシンスケ展かもしれない」が、全国で巡回中のヨシタケさん。現在は東京会場に続き、兵庫県伊丹市の市立伊丹ミュージアムで開催中だ。
7月半ばの内覧会。あいさつは、やはりネガティブな言葉で始まった。
「僕の原画は小さい上に色が付いてないので、絵本より情報量が減っちゃうんです。だから僕が絵本原画展やっても、わざわざ来る必要がないじゃないかってところがそもそものスタートで、原画展が開けるとは思わなかった」
当人が「できると思わなかった」展覧会はしかし、8月28日の会期末まで全日キャンセル待ち状態という人気沸騰ぶりだ(予約状況の詳細はhttps://www.e-tix.jp/itami-im/)。
原画だけでなく、作品がどうやって生まれるかが手に取るようにわかるアイデアスケッチや設計図など400点以上が並ぶ。圧巻は、壁一面を埋める約2000点のメモ。ヨシタケさんが普段から持ち歩く小さな手帳に小さく描かれたスケッチは、一つ一つ眺めているだけで一日過ごせそうな面白さだ。
ただ、「わざわざ来る必要がない」という認識からスタートしているだけあって、ヨシタケさんのサービス精神はここで終わらない。
…
この記事は有料記事です。
残り1814文字(全文2537文字)