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戦うって何?

ロシアのウクライナ侵攻は、平和にどっぷりつかる私たちに戦争の現実を突きつけた。戦争について一歩踏み込んで考える。

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プーチンが恐れるものは 再認識したい反戦の心

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逢坂冬馬さん(左)と宇野重規・東京大教授
逢坂冬馬さん(左)と宇野重規・東京大教授

 「人間の想像力は弱く、戦争で死ぬ人や、殺すことのリアリティーを持ちにくい」――。「同志少女よ、敵を撃て」の作家、逢坂冬馬さんと民主主義を論じてきた政治学者、宇野重規東京大教授の対談。「下」は、安倍晋三元首相の銃撃事件から戦後の反戦意識まで、日本社会の姿を通して私たちが少しでも平和な未来へと歩むヒントを探っていきます。【構成・鈴木英生】

 「上」では、現代日本でどう反戦に興味を持ってもらうか、また、世界が平和に向けて歩んでいると信じる意味や現代のナショナリズムの問題性などを論じ合いました。

元首相銃撃事件は民主主義の敗北

 ――宇野さんは安倍元首相の殺害事件を「民主主義の敗北だ」と論じられています。国家間の対立を戦争にエスカレートさせないことと個人の苦悩が暴力へ結びつかないようにすることには、パラレルな面がありそうです。

 逢坂 山上徹也容疑者は、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に家庭を崩壊させられたと恨み、旧統一教会に関係する人物として安倍元首相を殺したとされます。絶対に許されない犯罪ですが、論理の筋道自体は比較的明快です。先日、加藤智大元死刑囚の刑が執行された秋葉原通り魔事件などとは、その点が大きく違います。問題は、なぜ個人がいきなり元首相を殺してしまったかです。

 そこで考えたいのが、メディアや社会の信頼性です。旧統一教会と政治との関わりはもっと報道されるべきだと思いますが、「それだと結局、元首相殺害の動機をかなえていないか」と疑問視する意見があります。少なくとも、旧統一教会の問題が今ここまで報じられているのは、あの事件がきっかけです。たとえば、もし山上容疑者がカルト宗教の被害者の会に参加してシンポジウムなどで問題提起をしても、メディアは決して今回ほど振り向かなかったでしょう。

 宇野 おっしゃるとおり、旧統一教会や国際勝共連合と保守政治家の関係は徹底的にクローズアップされるべきです。ただし、今回の問題は旧統一教会に尽きるものではありません。衝撃だったのは、あんな手作りの銃で元首相が殺せた事実です。

 逢坂 あの銃こそが容疑者を象徴していますね。…

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