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安全保障を考える夏 政策の体系的立案を=中西寛・京都大教授

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=内藤絵美撮影
=内藤絵美撮影

中西寛(ひろし)・京都大教授

 日本人にとって8月は戦争について思う月である。しかし今年はかつてなく戦争の記憶が現在の安全保障や防衛問題と重なり合う夏となった。

 2月に開始されたロシアによるウクライナ侵攻をきっかけとした世界的緊張が大きい。これによって約30年前に冷戦終結によって始まった時代は終わりを告げたというべきだろう。のみならずロシアは日本と北方で国境を接する隣国であり、その軍事的動向は日本にとっても直接的な影響をもつ。日本にとってさらに深刻なのは朝鮮半島と中国沿岸部における軍事的緊張の高まりである。年初以来、北朝鮮はミサイル発射を繰り返し、核実験の可能性も取り沙汰されている。さらに8月2、3両日のペロシ米下院議長の訪台をきっかけに中国は台湾近海で大規模な軍事演習を行い、数発のミサイルは日本が主張する排他的経済水域(EEZ)内に着弾した。このように日本の安全保障環境は激変しつつあり、国民の多くもそのことを意識している。たとえばウクライナでの事態を受けて自民党は防衛費を北大西洋条約機構(NATO)なみの国内総生産(GDP)比2%程度に増額することを提案しているが、以前なら大論争を呼んだであろう提案について国民が比較的冷静に受けとめているのも日本人の意識変化の反映だろう。

 岸田政権は昨秋の発足以来、国家安全保障戦略、防衛計画の大綱(防衛大綱)、中期防衛力整備計画(中期防)からなるいわゆる安保3文書の改定を掲げてきたが、上述の事態を受けてこれら文書改定を最重要課題としている。情勢からして安保防衛政策の見直しは必要かつ適切だろう。

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