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戦うって何?

ロシアのウクライナ侵攻は、平和にどっぷりつかる私たちに戦争の現実を突きつけた。戦争について一歩踏み込んで考える。

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戦うって何?

停戦か抗戦か、揺れるウクライナ ベトナム反戦運動にヒント

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富田武成蹊大名誉教授
富田武成蹊大名誉教授

 ロシアのウクライナ侵攻開始から間もない3月に、日本のベテラン歴史研究者らが両国に対して即時停戦を求める声明を出した。その内容に国際政治学や安全保障などの研究者らから批判の声が上がり論争となった。声明の真意などについて、声明を出した側の研究者の一人、富田武・成蹊大名誉教授に聞きました。【聞き手・鈴木英生】

 富田名誉教授らは、3月の声明後も5月に韓国の知識人らと連名で即時停戦を求める声明を出し、7月にもグテレス国連事務総長に宛てた公開書簡で、停戦の仲介を求めました。Webサイト(https://peace-between.jimdosite.com/)でこれらの声明や、メンバーらの勉強会動画などが見られます。

双方に即時停戦呼びかけに批判

 私も参加する「憂慮する日本の歴史家の会」(代表・和田春樹東京大名誉教授)が3月15日に出したロシアとウクライナ双方に即時停戦を呼びかける声明は、ツイッターなどで「侵略する側とされる側を同列に置くものだ」と批判されました。会には、さまざまな意見があり、声明はあの時点での最大公約数的な内容です。会の周辺には、宗教者や被爆者らの「どんな戦争も即刻やめるべきだ」との主張もあります。

 ロシアによるウクライナ侵攻は紛れもなく「国際法違反」で、会はこれを一刻も早くやめさせるために行動しました。日本及び、ロシアとの関係が悪くない中国とインドが停戦を仲介すべきだと考え、日本外務省、露中印3カ国の大使館に申し入れもしました。しかし、ロシアは自国の正しさを言い募るばかりで、中印両国は自国本位の外交的打算から仲介に動こうとはしません。

 ウクライナ国民と軍の抵抗により、ロシアによる短期間での全土占領のもくろみは破綻しました。ブチャなど各地でロシア軍による虐殺が明るみに出て、態勢を立て直して戦力を集中したドンバス地方では、マリウポリをはじめ破壊の限りを尽くしています。

 こうした事態を受けて、会の内部で「即時停戦一本やりではロシアを利する」「戦争の行く末を見すえた公正な講和」を提示すべきだという意見が出ました。そこで、私は1960~70年代のベトナム反戦運動の先例を想起しました。

米軍を撤退させたベトナム反戦運動

 ベトナム反戦運動「ベトナムに平和を!」は、侵略国アメリカに対しては「北爆(北ベトナムへの米軍の爆撃)中止」や「米軍のベ…

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