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見えない予算

借金頼みの日本財政。「官から民へ」の流れの中、血税は適正に執行されているのでしょうか。

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1900超も乱立 使われない基金は「合法的な裏金」?

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参院本会議で2022年度補正予算が賛成多数で可決、成立し、一礼する岸田文雄首相(右)と閣僚ら=国会内で2022年5月31日午後4時45分、竹内幹撮影
参院本会議で2022年度補正予算が賛成多数で可決、成立し、一礼する岸田文雄首相(右)と閣僚ら=国会内で2022年5月31日午後4時45分、竹内幹撮影

 複数年度にわたって実施する事業の予算を積み上げる政府の基金が乱立している。毎日新聞が集計したところ、公益法人や地方公共団体に設けられた基金の数は1900超。予算の執行率が1桁にとどまっている事業も存在する。政策目的を果たせずに滞留する予算。なぜ使われないのか。

使われない予算

 「4%」。マイナンバーカードを健康保険証として利用するため、病院や診療所、調剤薬局のシステム整備を後押しする事業に使う予算を積み上げている厚生労働省の「医療情報化支援基金」(事業額1068億円、2020年度末時点)の執行率だ。事業が始まったのは19年度。顔認証付きカードリーダーを導入する場合、機器の無償提供に加えて1台当たり最大105万円(もしくは事業額の半分)を補助する仕組みだが、これまでに使われた予算はわずか44億円(20年度末時点)にとどまる。

 マイナンバーカードそのものの普及率も伸び悩んでおり、今年7月末時点で45・9%。菅前政権下では、「全て」の医療機関で顔認証付きカードリーダーを22年度中に導入する目標を掲げたが、導入率は約2割(6月時点)と、目標達成のめどは全く立っていない。それでも、政府は今年度、この基金に735億円を積み増した。厚労省の担当者は「コロナ禍に加え、半導体の供給不足が重なったことが執行率が低い要因だ。申請数も増えてきている」と話し、必要な予算措置だと強調する。

「困っていない」現場は冷ややか

 医療機関のデジタル化は岸田文雄首相が掲げる「新しい資本主義」の重点分野でもある。政府は7月29日、各省庁が23年度予算を要求する際のルールとなる概算要求基準を閣議了解。「新しい資本主義」の関連施策には4・4兆円規模の特別枠が設けられており、医療機関のデジタル化にも予算の重点配分が続く可能性が高い。

 しかし、予算の使い手となる医療現場からは冷めた声が漏れる。宮城県の総合病院に勤める内科医の男性は「現場は特に困っていないし、『政策誘導』の意味合いが強すぎる」と指摘。「システムを導入して診療報酬が一時的に上がったこともあったので患者が混乱しかねない」と話す。

 デジタル化を後押しする制度としては、経済産業省の「IT導入補助金」(事業額4000億円)などもある。IT機器を導入する際、最大で450万円を補助する制度だが、大手医療機器メーカーの営業担当者は「ニーズに基づいた政策というより省庁間で予算を奪い合っているようにしか見えない」と話す。オンラインの本人確認システムを商品化しているリコージャパンの担当者は「補助金を使って導入するにしても数十万円程度の医療機関の持ち出しがある。半導体不足というよりも、政府が有効な需要喚起策を打ち出せていないことが事業の執行率の伸び悩みにつながっている」と指摘する。

6割は補正予算で計上

 なぜ、公金を投入したまま事業が執行されないのか。…

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