連載

戦うって何?

ロシアのウクライナ侵攻は、平和にどっぷりつかる私たちに戦争の現実を突きつけた。戦争について一歩踏み込んで考える。

連載一覧

戦うって何?

「戦わなければ殺される」ウクライナと日本を隔てる戦争の記憶

  • ブックマーク
  • 保存
  • メール
  • 印刷
岩下明裕北海道大教授=札幌市北区の北海道大で2022年3月17日、高山純二撮影
岩下明裕北海道大教授=札幌市北区の北海道大で2022年3月17日、高山純二撮影

 ロシアのウクライナ侵攻開始後、両国へ即時停戦を呼びかけた和田春樹東京大名誉教授ら日本のベテラン歴史学研究者らに、国際政治や安全保障の中堅・若手研究者らから「双方を同列に扱うな」などと批判の声が上がりました。和田名誉教授と若手研究者らの間の世代にあたる岩下明裕・北海道大教授に、この論争の背景にある日本の反戦意識の歴史的事情や、ウクライナ問題を考えるための前提などを読み解いてもらいました。【聞き手・鈴木英生】

 岩下教授は大学生時代、和田名誉教授らも支援した韓国の民主化運動に感銘を受け、今は中国で拘束されている友人の解放を訴えるなど、ベテラン歴史研究者と心情的に近い面もあります。他方、研究者としては、中露や日露の国境・領土問題に関して現実主義的な安全保障観に基づいた議論を展開してきました。

停戦求める声明の問題は中身

 和田東京大名誉教授らベテラン研究者の方々がやむにやまれぬ思いで停戦を求める声明を出したことが、無意味だとは思いません。彼らも、停戦で即座に悲劇が終わると信じるほど楽観的ではないでしょう。一方で、反戦運動の拡大が平和への動きに影響を及ぼした例は、過去にもあります。「無駄な声をあげるな」と批判したところで、ニヒリズムがはびこるばかりです。

 問題は、声明の中身でしょう。ロシアとウクライナ双方に停戦を呼びかけ、ウクライナの抵抗を否定すると受け取られかねない表現は疑問でした。市民団体が中国やインドという国家に和平の仲介を求めるのもずれて感じました。特に、国内での人権抑圧が著しい中国政府に呼びかけたのは不思議です。むしろ、市民として、理不尽な国家の暴力にさらされる世界中の人々との連帯に力点を置くべきだったのではないでしょうか。

ウクライナに残る虐殺、追放の記憶

 日本では「死者が一人でも増えないようにウクライナは今すぐ降伏せよ」との声さえ散見されます。背景に、日本特有の戦争体験に基づく反戦意識があるように感じています。

 近代日本は、自衛の名で侵略戦争を引き起こしましたが…

この記事は有料記事です。

残り1127文字(全文1972文字)

あわせて読みたい

マイページでフォローする

この記事の特集・連載
すべて見る
この記事の筆者
すべて見る

ニュース特集