「まどろっこしさがいい」 SNS時代に見直される文通

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SNSの時代に見直される文通=Getty Images
SNSの時代に見直される文通=Getty Images

 瞬時に多人数で交流できるSNS(ネット交流サービス)の時代に、ペンフレンドと手紙をやりとりする文通を始める人がいる。新型コロナウイルスの感染拡大で縁遠くなった人のぬくもりが手紙から伝わってくるという。住所や本名などの個人情報を伏せたまま文通を仲介するサービスも広がっている。SNSの時代に見直される文通の魅力を探ってみた。【賀有勇】

「まどろっこしさ」がいい

 「あなたの手紙からいつも伝わってくる優しさと思いやりは、ご経験が紡ぎ出すものでしょう」

 埼玉県に住む74歳の女性は、最近受け取った千葉県に住む70代の男性ペンフレンドからの手紙の一節をかみしめるように読み返した。

 男性とは2年半ほど手紙のやりとりを続けている。ありふれた暮らし。それを同世代で伝え合う。何気ないやりとりを続けるうち、受け取った手紙ににじむ思いやりを感じて心が温まるようになった。

 返事を書く時は、封筒や便箋を買い求め、ペンを取って、言葉を選び、丁寧に文章にしていく。投函(とうかん)したら返事を待ちわびるのだ。

 「手紙はまどろっこしい方法ですが、(そのプロセスが)心に多くのものを残してくれます。自分のペースでやりとりできる、ゆるい関係がいいんです」。女性はこう思っている。

 関東地方に住む坂本菊枝さん(62)は、年齢を重ねるごとに友達づくりが難しくなったと感じている。親が他界し、子供も自立して自分の時間ができた。そこで中学生時代にしていた文通を2020年に再開してみた。現在は全国各地の同年代の女性約10人と文通を続けている。

 坂本さんは厳しい暑さが続いた今年7月、関西に住む60代の文通相手に送る便箋を買い求めた。季節に合わせた便箋選びも楽しみの一つ。青空に雲があしらわれた夏らしいデザインをチョイス。10年前に保護犬だったのを譲り受け、家族に加わった雑種の「プント」が花火や夕立の雷鳴におびえている様子をしたためた。

 1カ月ほどして返事が届いた。…

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