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森と海からの手紙

人の暮らしが自然と乖離していく時代。森と川と海から聞こえてくるささやきを萩尾信也客員編集委員がつづります。

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森と海からの手紙

母の人生をたどる旅 長崎の「炭住」から「鉄の街」釜石へ

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両親がデートした平戸島の公園に立つ母。背後に平戸大橋と平戸城が見える=長崎県平戸市で2022年6月23日午前10時半、萩尾信也撮影
両親がデートした平戸島の公園に立つ母。背後に平戸大橋と平戸城が見える=長崎県平戸市で2022年6月23日午前10時半、萩尾信也撮影

 「もう一度、長崎のヤマと海を見たいとよ」

 今年正月に卒寿を迎えた母の思いに、一念発起。この夏、マイカーに母を乗せて、90年間の人生をたどる旅に出た……。

    ◇

 「ヤマ」とカタカナで書いたのは、18年前に78歳で逝った父が、鉱山技師だったことに由来する。鉱山で働く者と家族にとって、「ヤマ」とは炭鉱をさす隠語だった。

 熊本県の農家の7人兄姉の末に生まれた父は、学徒動員世代で、現在は長崎県佐世保市に統合された旧北松浦郡の炭鉱に職を得た。そこは、炭鉱が連なり、採掘で出たガラを積み上げた「ボタ山」が点在していた。

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