連載

指先のエロス

全盲の落語家・桂福点さんが、魅惑の世界を「指先」案内します。

連載一覧

指先のエロス

遠い座布団 高い壁 未来をまさぐる裸の挑戦=桂福点

  • ブックマーク
  • 保存
  • メール
  • 印刷
イラスト・まどさん
イラスト・まどさん

 均整の取れた肉体を美しいというならば、私たちはシュールな美をまとって生きているのかもしれない。持って生まれた肉体をいとおしく思えるか否かは、人さまざまだ。

 ――私の指先は彼女のほおから、程よく膨らんだ唇へ、そして首筋から肩へとゆっくり滑っていった。なんとも官能的な時間――。

 NHKの番組「バリバラ」で私が監督兼主演を務めたショートムービー「鬼は外」の一場面だ。障がい者の持つ肉体や精神の奥に潜む陰の部分を鬼として描いたが、私がその女体に触れることで「人」であることを確認した。世界の三池崇史監督に「一緒に続編を」と言っていただけた。

 相方の主演・千秋さんには「両上肢機能障がい」がある。両腕が短く、指は右に3本。その指に触れると、自ら施したネイルアートが、幾何学的な形を作っていた。日常生活では、手の代わりに足を器用に使う。前向きな彼女だが、心のヒダに隠された場所がある。子どものころ、彼女の体が目立たないように、ポンチョのような服を親が着せていたという。そんな彼女が背中越しのヌードをカメラの前で露(あら)わにしたことは、自分への…

この記事は有料記事です。

残り1108文字(全文1576文字)

あわせて読みたい

マイページでフォローする

この記事の特集・連載
すべて見る

スポニチのアクセスランキング

現在
昨日
1カ月

ニュース特集