日銀VS海外投資家 国債売買でバトル 当事者が明かすその背景
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国債を売買する債券市場で今年6月、日銀と海外の機関投資家が激しいバトルを繰り広げたことをご存じだろうか? 国債に売りを浴びせる海外投資家に対し、日銀は無制限の国債買いで対抗。第1ラウンドは日銀が制した。参戦したヘッジファンドの一つが毎日新聞の取材に応じ、バトルの背景や、第2ラウンドの可能性を明かした。勝負の行方は果たして。
日銀の金融緩和「維持不能」
日銀は現在、「長期金利の指標となる償還期間10年の国債の利回りを上限0・25%程度に抑える」という政策目標を掲げている。超低金利状態を意図的に作ることで、金利をほとんど気にすることなくおカネが借りられる金融緩和環境を作り出す狙いだ。
日銀の思惑通り低位で推移してきた10年物国債の利回りに異変が生じたのは、金融政策を決める日銀の重要会議を翌週に控えた6月上旬だ。債券市場で10年物国債が大量に売られ、利回りが急上昇を始めたのだ。日銀が上限とする0・25%を突破しても売り圧力は収まらず、17日には一時0・265%を付けた。
仕掛けたのは海外の機関投資家だ。その中の一つ、英ヘッジファンド「ブルーベイ・アセット・マネジメント」の日本市場担当者が毎日新聞の取材に応じた。
海外市場では当時、「日銀が6月に金融政策を変更するはずだ」との観測が強まっていた。日銀が金融引き締めに動けば、10年債の利回りは一気に上昇する。いち早くこの流れに乗ることで、利益を確保する狙いがあったという。
「世界的な物価上昇が続く中、10年債の利回りを低位で抑え込む日銀の政策は『維持不能』と判断した。我々だけではない。他の投資家も同じ思いを抱いていたから、市場で大きなうねりが起きた」。ブルーベイの担当者はこう明かす。
世界の潮流に逆行?
海外投資家にとって、日銀の金融政策は、世界の潮流に逆行しているように見えるという。
米欧の中央銀行はインフレ抑制に向け一斉に金融引き締めに動いている。対して日銀は金融緩和路線を堅持している。
その弊害も表面化している。代表例が円安の加速だ。おカネは金利の高い国で運用した方が有利になる。大幅利上げを続ける米国と、動かない日銀の構図の中で日米の金利差が拡大。為替市場では円を売って、投資に有利なドルを買う動きが続いている。
記事の後段ではヘッジファンドの分析と日銀の戦略を詳報します
「円安が進めば、(輸入コストの上昇を通じて)物価上昇圧力が高まる。物価高による人々の不満は政府にとって大きなリスクだ。日銀に対…
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