「見つかったら殺される」脅された家族 ロシア占拠の原発一帯は今
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朝になっても降りやまぬ雨が、天井のシートを重たくぬらす。人いきれと雑音にまみれた仮設テントの中に、ひときわ疲れ果てた様子の家族がいた。
8月中旬、ウクライナ南部の都市ザポロジエの避難民支援所。ドミトリー・ミロンチェクさん(38)は、妻と3人の子と一緒に前日の深夜に同市にたどり着いたばかりだ。砲弾の飛び交う前線を越え、南方のロシア占領地域から逃れてきた。
連載「ウクライナ侵攻半年 『私』たちの戦争」は全8回です。
このほかのラインアップは次の通りです。
第2回 のしかかる戦争の負担
第3回 東部の人は冬を越せるのか
第4回 なぜ女性は戦場に立つのか
第5回 ロシアとの亀裂が走り
第6回 若者が憧れる「英雄部隊」
第7回 戦争犠牲にどう向き合う
第8回 戦時下の出産と未来への夢
一家が暮らしていたブロホベシェンカ村の周辺一帯は、2月の侵攻開始から約1週間で露軍に制圧され、今もその支配下にある。
村のわずか18キロ西にあるザポロジエ原発に対する砲撃が相次ぐ。ウクライナ側は原発を占拠したロシアが自ら攻撃を仕掛け、原子力災害の恐怖をあおっていると非難するが、ロシア側はウクライナの攻撃だと主張。欧州最大級の原発を巡る危機に国際社会が固唾(かたず)をのむ。現地の状況を尋ねると、妻アナスタシアさん(29)は「原発で作業員が拘束されたり、ロシアが爆弾を仕掛けたりしているといううわさを聞いたが、実際に何が起きているのかは分からない。ただ、恐ろしいだけです」と言った。
苦情を伝えた後にロシア兵に追われ
住み慣れた地を離れたのは、ドミトリーさんにロシア兵の「魔の手」が迫ったためだ。占領後、ロシア兵らは毎晩のように酒に酔って威嚇射撃し、逆らう住民に暴行を繰り返した。近所の飲食店は、そんな兵士らのたまり場となっていた。
ある日、深夜まで続く騒音に耐えかね、店主の女性に苦情を伝えた。それが悪夢の始まりだった――。
夜中に自宅の前で車のドアが開く音を聞いた。「ロシア兵が捕まえに来た」と察し、近くに住む兄弟の家に逃げ込…
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