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8月の終わりはなんだか寂しい気分になります。夏休みを惜しむ名残でしょうが、京都の五山送り火など情緒ある夏の伝統行事が多い関西で過ごしていることも影響していそうです。さて今回は、そんな8月の風物詩の一つに関する話題です。【大阪学芸部・花澤茂人】
「奈良の大仏」の手のひらに乗ったことがある。奈良支局員だった12年前の8月7日、東大寺(奈良市)の恒例行事「お身拭い」を取材を兼ねて体験させてもらったのは、私の数少ない自慢の一つだ。ここ2年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止されていたが今年は実施されると聞き、早朝から大仏殿へ。白い衣で汗を流す人たちを見ながら、あの日、大仏様に教えてもらったことを思い返した。
気持ちよく晴れた日だった。早朝から境内の風呂で体を清め、白衣と草履姿になって大仏殿へ。約150人の寺関係者が参加し、それぞれ「頭」「膝元」など担当場所が割り振られる。私の担当は「左手」だった。はしごを使って膝元へよじ登り、転ばないように注意しながら衣のひだの一つ一つを踏み越えていく。見上げると、大仏様の鼻の穴の中までよく見えた。
やっとの思いで手のひらの上に立ちはたきを振ると、たまっていたほこりが舞い上がった。指の間やつめの付け根も丁寧に払い、その後はから拭き。大仏様はつるっとしている印象があったが、その肌は意外とざらついていて、糸が引っかかって拭きづらかった。
左脇の下あたりに、周囲の濃い青銅色から浮き上がるように金色に輝いている部分があった。不思議に思って見つめていると、…
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