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全国で唯一となる特定危険指定暴力団の「工藤会」(北九州市)トップで総裁の野村悟被告(75)が市民を襲撃した4事件を巡り殺人罪などに問われ、福岡地裁に死刑判決を言い渡されてから24日で1年。法廷で裁判長に「後悔するぞ」と発言し、判決に強い不満を漏らした野村被告はすぐに控訴したが、審理が始まる見通しは立っていない。トップ不在の組織は福岡県警の徹底した取り締まりもあり弱体化が進む一方、組員らが首都圏で活動を活発化させる動きもあり、県警は警戒を強めている。
暴排条例で深刻な資金難
判決から約1カ月半後の2021年10月、同市小倉北区にある野村被告の出身組織「田中組」の本部事務所と紺屋町事務所。シートに覆われたビルで、作業員が解体工事用の足場の組み立てを進めていた。
田中組は工藤会ナンバー2で会長の田上不美夫(たのうえふみお)被告(66)=福岡地裁で無期懲役判決を受け控訴中=も組長を務めたことがある工藤会の主要組織で、両事務所は一時100人以上の組員が出入りしたとされる一大拠点だった。撤去は22年3月までに完了し、組織の弱体化を印象付けた。
工藤会の壊滅を目指す「頂上作戦」に県警が14年9月に着手して以降、撤去が確認された組事務所はこれまで24カ所に上る。
背景の一つにあるのは、工藤会の深刻な資金難だ。10年4月施行の福岡県暴力団排除条例は全国で初めて、事業者が暴力団に利益供与することを罰則付きで禁じた。そのため、飲食店主らが工藤会からの不当要求を拒みやすくなり「みかじめ料(用心棒代)」収入も激減。関係者によると、これまでに数億円以上という野村被告らの裁判費用の負担も更に重なった。
工藤会が12年施行の改正暴力団対策法に基づき、全国唯一の特定危険指定暴力団となった点も大きい。指定された暴力団には、各都道府県公安委員会が事務所の使用制限命令を出すことができる。その結果、組員が自由に事務所へ出入りできなくなり、事務所の維持管理が難しくなるからだ。
ある古参組員は…
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