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学校は子どもの学びと人格形成の場である。政治的な価値観を押し付けるようなことがあってはならない。
7月に行われた安倍晋三元首相の葬儀に合わせ、東京都や川崎市、福岡市など、各地の教育委員会が弔意を表す半旗の掲揚を学校に求めていた。実際に掲げたところもある。
管理・指導する立場の教委は「強制はしていない」と説明するが、「指示」と受け止めた学校は少なくないだろう。
懸念されるのは、9月に予定される国葬に向けて、こうした動きが一層強まることだ。
教育基本法は、学校における政治的中立性を確保するため「特定政党の支持や政治的活動」を禁じている。
学校として特定の政治家への弔意を示すことは、これに抵触する可能性がある。
弔意は本来、個人が自分の意思で示すものであり、憲法で保障されている子どもや教職員らの内心の自由が侵される恐れもある。
1967年の吉田茂元首相の国葬では、自治体、企業、学校が黙とうや弔旗掲揚を行い、午後を休みとした。政府の要請に応えたものだった。
2年前には、中曽根康弘元首相の内閣・自民党合同葬に合わせ、文部科学省が全国の国立大学に弔意表明を求める通知を出した。実際に弔旗を掲げた大学は少なくなかった。
安倍氏の国葬について、学校や企業などに同様の要請をするかどうかをただした野党議員に対し、政府はこれまで「検討中」とだけ答えている。
今回の国葬実施を巡っては、世論が二分されている。
毎日新聞の世論調査では、反対する人が53%と、賛成の30%を大きく上回った。
安倍氏への銃撃事件後、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と自民党の根深い関係が明らかになったことが影響しているとみられる。閣僚や党役員との接点が相次いで判明し、国民は不信感を募らせている。
そうした中で、政府や自治体が弔意の表明を強要することになれば、社会の分断に学校を巻き込むことにもなりかねない。