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政府は原発の新増設やリプレース(建て替え)を検討する姿勢に大きくかじを切った。脱炭素社会や電力の安定供給を実現するには原発の活用が不可欠と判断したためだが、建設には多額の費用がかかり地元などでは反対の声も強く、大きな議論を呼びそうだ。
規制委は「静観」
「電力需給逼迫(ひっぱく)という足元の危機克服のため、今年の冬のみならず今後数年間を見据えて、あらゆる施策を総動員する」。首相官邸で24日に開かれた脱炭素社会への移行に向けた政策を検討する「グリーントランスフォーメーション(GX)実行会議」で、岸田文雄首相は強調した。
これまで政府・与党は世論の反発を恐れて新増設やリプレースについて本格的な議論を棚上げにしてきた。日本の中長期的なエネルギー政策の方向性を示す「エネルギー基本計画」は2011年以降、3度改定されているが、新増設などは明記されていない。
そんな“タブー”を打ち破った背景には「激変するエネルギー環境」(政府関係者)がある。3月と6月に起きた電力需給逼迫で安定供給の不安が顕在化。ロシアのウクライナ侵攻を受けて燃料価格が高騰し、電気代が値上がりしている。
政府は30年度の温室効果ガス排出量を13年度比46%減などとする脱炭素目標を掲げている。しかし、福島の事故後、原発は10基しか再稼働しておらず、石炭や液化天然ガスなどの化石燃料を使う火力発電に頼ることが大きな問題として浮かび上がった。
7月中旬には、深刻な電力不足が懸念される今冬に向け、岸田氏は記者会見で再稼働の実績がある10基のうち最大9基を動かすと述べ、電力の安定供給をアピールした。さらに経済産業省の専門家会合は「革新軽水炉」と呼ばれる最新技術を実装した大型原発(商用炉初号機)について「30年代半ばに運転開始する」などとする技術工程表の骨子案を示した。政府内では「原発は選択肢であり、忌避し続けるのは違う。原発活用は自明だ」(経産省幹部)といった見方が強まっていた。
岸田氏はGX実行会議で、最長60年としてきた原発の運転期間の延長を検討する方針も示した。…
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