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ウクライナ侵攻

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻から1年。長期化する戦闘、大きく変化した国際社会の行方は……。

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マクドナルドは撤退したけど… 対ロシア制裁の効果どこまで

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ロシア事業を撤退したマクドナルドの後継店「フクースナ・イ・トーチカ」は6月にオープンした=ロシア北西部サンクトペテルブルクで2022年6月、ロイター
ロシア事業を撤退したマクドナルドの後継店「フクースナ・イ・トーチカ」は6月にオープンした=ロシア北西部サンクトペテルブルクで2022年6月、ロイター

 ウクライナ侵攻後にロシアから撤退した米ファストフード大手マクドナルドの後継店「フクースナ・イ・トーチカ」(おいしい、それだけ)。ロシアの実業家が買収し、6月に新たなブランド名でオープンさせた。記者がモスクワ市内の店舗を訪れると、広告業界で働くイワンさん(26)は「味は変わっていないが、メニューが少なくなったのが寂しい」とため息をついた。

メニューから消えたビッグマック

 同店ではマクドナルドから受け継いだ料理を提供しているが、商標権などの関係からビッグマックなど一部の商品がメニューから消えた。イワンさんは「ここに限らず全般的に選択肢が狭まっている」と言う。

 ウクライナ侵攻後、西側諸国の多くの有名ブランドがロシアから撤退している。米コーヒーチェーン「スターバックス」の店舗を買い取ったロシア企業が、ロゴが似ている「スターズコーヒー」としてオープンさせたことも話題になった。

 ロシアの店頭で選べる商品の種類は確実に減っており、イワンさんは「以前は自分が世界の一部だと感じていたが、今は第三世界の国にいるようだ。広告を出すブランドも減っている」と将来への不安を語った。

 米エール大の研究グループが7月に発表した調査結果では、西側諸国からの制裁などを理由にロシアから撤退したり、事業を縮小したりした外国資本は約1000社に上る。ロシアでの売り上げや投資の総額は、ロシア国内総生産(GDP)の約4割に当たる額になるという。

西側の措置は「失敗」と強調

 ただ、プーチン政権は外国企業の撤退をロシア経済が新たな成長を遂げる「チャンス」と呼びかける。実際、仏自動車大手ルノーやスウェーデンの家具メーカー・イケアの工場などをロシアの企業などが買収する動きも相次いでいる。

 プーチン政権が強気を崩さない背景には、西側諸国の経済制裁が当初の予想ほど経済状況を悪化させなかったことがある。暴落するかにみられた通貨ルーブルは侵攻前の1ドル=70ルーブル台を上回り、一時は2015年並みの50ルーブル台まで高騰した。侵攻当初に起きた食品価格の高騰も一段落するなどパニック的な動きは収まり、政権は制裁の「失敗」を強調。4~6月期の実質GDP(前年同期比4%減)も減少幅は当初予測より小さく、ロシア中央銀行は24年にはプラス成長に転じるとのシナリオを描く。

 だが、足元には不安要素も抱える。ルーブル高が続くのは、制裁の影響で欧米諸国…

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【ウクライナ侵攻】

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