本当に薦めたい絵本は 子どもと絵本、見つめた80歳店主の思い
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8月も残り少なくなりました。大人になっても夏の終わりにさみしさを覚えるのは私だけでしょうか。今回のコラムの主人公は、保育士として24年活躍した後、絵本の店を21年にわたって手がけてきた女性です。現在80歳。子どもたちと絵本を見つめてきた目に映るものは。【東京社会部・銭場裕司】
東急大井町線・緑が丘駅のそばにある川沿いの道を歩くと、住宅街の中にレンガをあしらった建物が現れる。絵本の店・星の子(東京都大田区石川町)だ。オオカミに負けなかった「三びきのこぶた」に登場するレンガの家をイメージして自宅を改修。2001年3月に店を開き、子どもたちに絵本やおもちゃを届けてきた。
店に入ると「ひとまねこざる」「ぐりとぐら」「わたしと あそんで」といったたくさんの絵本が並んでいる。ロシアによる侵攻後、話題になったウクライナの絵本「てぶくろ」もあった。
店を営むのは高橋清美さん。80歳になった自分と、支えてくれた夫の光夫さん(79)の年齢を考えて12月24日で店を閉じることにした。万感の思いを胸に、「ありがとうございました」という感謝の気持ちで客を迎えている。
高橋さんは30代半ばの頃、「人間を相手にする仕事をしたい」と勤めていた水産会社を辞めて保育士を目指した。「私、これからはお茶わんを洗ったりできないからね」。そう宣言して保育士になる国家試験の勉強に全力を注いだという。光夫さんは「こうと決めたら一生懸命にやり抜く人。素晴らしいなと思っていました」と笑みを浮かべて当時を懐かしむ。
絵本の店に挑戦しようと決めたのは、保育士として60歳の定年が近づいた頃だ。自宅の台所と駐車場を潰してスペースを作り、店に改修した。店に並べる本を受け取りに出かけてリュックと両手の袋に詰めると、大切なものを連れて帰るような幸せな気持ちになった。「子どもから『読んで』って何回もねだられました」。送り出した本をそんなふうに気に入ってもらえることがうれしかった。
絵本の店を営むようになった高橋さんが知ったことがある。…
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