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映画界の男女格差 放置したままでいいのか

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 日本の映画製作現場において、女性の登用が進まず、ジェンダーギャップが放置されている。

 映画界の課題解決に取り組む団体「Japanese Film Project(JFP)」によると昨年、興行収入が10億円以上だった実写邦画16本のうち女性監督作品は一本もなかった。一昨年もゼロだった。

 東宝、松竹、東映、KADOKAWAの大手4社が年内に製作・配給を予定する42本のうちでも、4本にとどまる。

 製作費が高い作品で、女性監督が起用されるチャンスが少ない実態が浮かび上がった。JFPは「問題が認識されているのに変化がない」と指摘する。

 なぜ改善されないのか。

 まず、映画界が男性を中心に回ってきた事情がある。JFPの調査では今年5月現在、大手4社で女性役員の比率は1割未満だ。

 過酷な労働条件の影響もある。スタッフにはフリーランスが多く、長時間・低賃金の労働を強いられている。女性が働き続けられる環境が整っていない。

 女性のキャリアアップが阻まれる状況は「ガラスの天井」と言われる。映画界では、フィルムの素材になぞらえて「セルロイドの天井」と呼ばれてきた。

 海外では改善の動きが出てきた。米国で2017年、性暴力を受けた女性たちが映画プロデューサーを告発した事件を機に「#MeToo」運動が起こった。男性が中枢を占める業界の構造改革が必要との意識が高まった。

 米アカデミー賞は24年から、俳優やスタッフに女性や非白人、性的少数者などを一定程度含むことを作品賞の選考基準にする。

 韓国も16年ごろから女性映画人が中心になって声を上げてきたという。19年の興行収入トップ11作品のうち4本は女性監督だ。

 是枝裕和監督は「このままいくと手遅れになる」と日本の現状に警鐘を鳴らす。仏映画界を参考に、興行収入などの一部を製作や労働環境改善の支援に振り向ける制度の導入を提唱している。

 娯楽の選択肢が増え、グローバル競争が激しさを増す中、日本映画が生き残るには多様性こそが必要だ。そのためには、まずジェンダーギャップの解消に取り組まなければならない。

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