「だいじょうぶ」キャンペーン あすは防災の日 「いざ」のため、学び備える

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夏休みを利用して「東京直下72時間ツアー」に参加した親子=東京都江東区で2022年8月9日、明珍美紀撮影 拡大
夏休みを利用して「東京直下72時間ツアー」に参加した親子=東京都江東区で2022年8月9日、明珍美紀撮影

 関東大震災(1923年)から来年で100年となるが、地震はいつ、どの程度の規模で発生するか、予想が難しい災害だ。いざというときに身を守るには、日ごろの備えや、訓練などで防災意識を高めることが重要になってくる。9月1日は「防災の日」。【明珍美紀】

 「国や自治体の支援体制が整うまでをどう生き残るかが大事」と語る東京臨海広域防災公園管理センター長の丸山浩司さん=東京都江東区で8月9日、明珍美紀撮影 拡大
 「国や自治体の支援体制が整うまでをどう生き残るかが大事」と語る東京臨海広域防災公園管理センター長の丸山浩司さん=東京都江東区で8月9日、明珍美紀撮影

そなエリア東京「72時間ツアー」

 地震、震災による被害から命を守るには、事前の準備とともに発生した後、どう行動するかが大事だ。

 東京都江東区の東京臨海広域防災公園内にある防災体験学習施設「そなエリア東京」は、地震発生後の「生存力」を身につけるための「東京直下72時間ツアー」を行っている。

 体験ゾーンに入り、エレベーターに案内される。乗り込むと床が振動し、「下降中に震度7の首都直下地震が発生した」と想定して、緊急停止。エレベーターから降り、停電のため暗くなった通路を歩いて行くと、被災した街を再現したゾーンに入り込む。入り口で渡されたタブレット端末に示される防災クイズに答えながら危険箇所を確認し、余震が繰り返される駅前の商店街や住宅街を進んでいく。その隣は実物展示による避難所だ。小型テントや段ボールのついたてなどがあり、避難生活のイメージをつかむことができる。

 横浜市から、娘2人と参加した会社員の女性(45)は「私は関西出身で、高校生の時に阪神大震災が起きて自宅が傾いた」と振り返る。「首都圏でも、大地震がいつ起こるか心配。娘たちに防災に関心を持ってもらいたい」と話した。

 「大規模災害時、国や自治体の支援体制が十分に整うまでの目安は3日、つまり72時間が目安といわれている。緊急時をどう生き抜くかのヒントを学んでもらうのがこのツアーの目的」と同防災公園管理センター長の丸山浩司さん(43)は説明する。

 約13ヘクタールの広大な敷地を有する同防災公園は、市民の避難所ではなく、首都圏で大規模な地震などの災害が起きた時、国の緊急災害現地対策本部が設置され、ヘリポートも完備。公園全体が広域的な指令機能を受け持つ場所になる。そのため、公園内には、発災時に使用されるオペレーションルームも設けられている。

 「平常時には、そなエリア東京のほか、芝生広場などでも防災関連のさまざまなイベントが行われています。家族で、公園の緑を満喫しながら、楽しく防災を学んでいただければ」と丸山さんは勧める。

「いつもの味」食べたら買い足す 回転備蓄を実践

「回転備蓄」の棚を台所に備える壹岐若子さん。普段の食事にも取り入れている=さいたま市で(リボーン提供) 拡大
「回転備蓄」の棚を台所に備える壹岐若子さん。普段の食事にも取り入れている=さいたま市で(リボーン提供)

 持続可能な生き方を学ぶ「サステナブルツーリズム」などを手がける有限会社「リボーン」を夫と運営する壹岐若子さん(64)は、生協で購入した食品でローリングストックと同様の「回転備蓄」を実践する。さいたま市の自宅兼事務所の台所の棚には常時、発芽玄米のパックと普通の精米(5キロ)、レトルトのカレー、サバの水煮や大豆の缶詰などをストック。普段の料理にも使い、食べたら買い足している。

 「水は、2リットルのペットボトル3箱(各6本入り)。カセットコンロも必需品で、どのような状態でもご飯は炊けるようにしている」と壹岐さん。「災害が起きても、いつもの味を食べられるのは安心の一つですね」

情報収集、デジタル活用を NPO法人プラス・アーツ東京事務所長 小倉丈佳さん

気象庁のホームページにある災害情報の内容を示す小倉丈佳さん=プラス・アーツ提供 拡大
気象庁のホームページにある災害情報の内容を示す小倉丈佳さん=プラス・アーツ提供

 自然災害は、地震や津波に限らない。台風、豪雨による水害も続いている。

 防災啓発事業を手がけるNPO法人「プラス・アーツ」東京事務所長の小倉丈佳(たけよし)さん(44)は、「非常時はパソコンやスマートフォン(スマホ)など、デジタルツールを利用して情報収集することが有効」と言う。

 たとえば、気象庁は、大雨による災害の危険度を段階的に色分けし地図上に表示する「キキクル」(危険度分布)をホームページで公開している。こうした気象や防災関連の通知サービスをスマホに登録しておけば、警報や注意報が画面に表示される。ライブ映像機能を備えたアプリケーションだと、河川の水位などの状況をリアルタイムで知ることができる。ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)も効果はあるが、「デマが流れることがある。気象庁や国土交通省など公的機関の情報も一緒に確認するといい」。

 居住地域に特化した情報を得るには、自治体の公式SNSや防災アプリが便利だ。アプリでは災害時の危険区域を記した防災マップを閲覧でき、被災したときは、周辺の避難所の混雑状況まで把握できるものがある。そのほか、無料通信アプリ「LINE」などを利用した安否確認の方法や、子どものそばに保護者がいなかった場合はどうするかなど、家族のルールを決めておく。

 自宅での備えは、「まずは家具の転倒防止策をほどこす。家具と天井の間には、つっぱり棒のほか、段ボール箱を置いて隙間(すきま)を埋める方法もある」。たんすや書棚を置かない安全エリアをつくり、家族が身を寄せられる空間を確保しておく。

 食料の備蓄については、普段、食べている缶詰やレトルト食品などを多めに用意し、定期的に食べては買い足す「ローリングストック」が一つの手。近年は、避難所ではなく、在宅避難を選ぶ人がいる。「著名シェフ監修のカレーやシチューなどを加えておけば、つらい避難生活の中で、ささやかな食の楽しみになります」

日ごろの交流で共助の力を 東京で4日「防災フォーラム」

 東京では9月4日、都慰霊堂(墨田区)で「防災フォーラム」が開かれる。「首都直下地震の被害想定とマンション防災」をテーマに、中林一樹・東京都立大名誉教授らが討論する。

 主催する「首都防災ウィーク実行委員会」事務局長の木谷正道さん(74)は「防災で大切なのは地域のつながり。障害者やお年寄りなど『災害弱者』といわれる方々を含め、日ごろからコミュニケーションを取っておくことで災害時に共助の力が発揮できる」と説く。

声かけ合える社会を目指し 安心・安全の輪大きく

 犯罪や災害、事故などから子どもたちやお年寄りらを守り「だいじょうぶ?」と声をかけ合える社会を目指す運動で、2007年に始まった。ロゴマークは「行政」「企業・団体」「市民」の三つのリングをかたどったもので「安心・安全の輪を大きくしていきたい」との願いが込められる。各地で「地域安全MAP教室」を開くなど防犯、防災、交通安全の三つを柱に、事業、イベントを展開している。


 「だいじょうぶ」キャンペーンホームページ http://daijyoubu-campaign.com/ または「だいじょうぶ」キャンペーンで検索


主催

「だいじょうぶ」キャンペーン実行委員会

(野田健会長=元警視総監、元内閣危機管理監、

全日本交通安全協会理事長/事務局 毎日新聞社)

共催

全国防犯協会連合会、全日本交通安全協会、日本消防協会、全国防災協会、日本河川協会、日本道路協会、都市計画協会、全国警備業協会、日本防犯設備協会、ラジオ福島、毎日新聞社

後援

内閣府、警察庁、文部科学省、国土交通省、総務省消防庁、

海上保安庁、東京都、NHK

協賛

セコム

東京海上日動火災保険

トヨタ自動車

三井不動産

協力

地域安全マップ協会

プラス・アーツ

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