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今週の本棚・なつかしい一冊

重松清・選 『わしらは怪しい探険隊』=椎名誠・著

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イラスト・寄藤文平
イラスト・寄藤文平

 (角川文庫 572円)

 大学生の頃、最も夢中になった書き手は椎名誠さんだった。一九八〇年代前半のことである。

 「スーパーエッセイ」と称され「昭和軽薄体」とも呼ばれた椎名さん(愛読者としては「シーナ」と表記したいのが本音である)のエッセイは、とにかく伸びやかだった。自由奔放、天衣無縫、縦横無尽、融通無碍(むげ)、元気潑剌(はつらつ)、天下御免……要するにヤンチャなのである。語り口は「である」と「です、ます」が混在するし、話題はあちこちに飛ぶし、「おれ」だったはずの椎名さんがいつの間にか「ワタクシ」になり、「わし」になってしまう。国語の作文の授業では「悪い例」として挙げられるものがテンコ盛りで、なおかつそれがたまらなく面白いのだ。

 本書は、椎名さんの著作の中で最初に読んで、いまなお再読する頻度が最も高い一冊。文庫版刊行直後の一九八二年夏に読んだ。僕は大学二年生だった。一人暮らしは二年目に入り、東京にもだいぶ慣れたものの、慢性的な寂しさや人恋しさを抱えていた頃である。そんなワカゾーにとって、椎名さんと仲間たちの繰り広げるドタバタ探険記は、まぶしいほどに光り輝いていた。

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