大学でなぜ「死蔵特許」が生まれるのか 産学連携で生じる溝
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大学と企業の共同研究が増える中、企業側の意向により、せっかく取得した特許が使えなくなるケースが問題になっている。こうした「死蔵特許」はなぜ生まれるのか。死蔵特許の中に「お宝」が眠っているかもしれないと、政府も改善に動き始めた。
まさかの共同研究
「自分が甘かった部分はもちろんあります。ただ何より悔やまれるのは、社会に還元する機会を奪われたということです」
こう嘆くのは、西日本の50代の国立大教授だ。この教授は約10年前、特殊な光を使って細胞を分類する手法を開発した。病気の新しい診断に応用できる技術だと考えている。
「我々が求めていた技術です」。研究に目をつけた医療機器メーカーから連絡を受け、教授は共同研究を始めた。「研究に注目してもらい素直にうれしかった」と話す。
メーカー側から細胞を分類する機器の試作機を製作するための資金提供を受け、数年でメーカーとの共同特許を複数取得した。書類の特許権者の欄にはメーカーと大学の名前、開発者の欄にはメーカーの担当者と教授の氏名が連名で記された。
ところがその後、次第にメーカーの担当者が研究室に訪れなくなった。実用化の方向性について話がしたいと教授が連絡を入れると、担当者は「進展があったらご連絡ください」とそっけなかった。そのまま、5年間の共同研究の期間は終わった。
教授は今も実用化の夢を抱いている。しかし、そこには共同特許の「壁」が立ちはだかっている。
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