原発こそ「新しい資本主義」 首相の原発回帰宣言、舞台裏と打算
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原発の新増設や稼働期間の延長といった活用策の検討を打ち出した岸田文雄首相。ウクライナ情勢の緊迫化に伴う電力供給不安を背景にした緊急避難的な措置に見えるが、実情は違う。<岸田氏の原発回帰は既定路線 参院選まで「余計なことしない」>で、青写真は政権発足直後に描かれていたことを報じた。今回は舞台裏に迫る。
ウクライナ危機が後押し
次の転機は2月末。ロシアによるウクライナ侵攻で世界的に資源価格が高騰し、「世界のエネルギー事情は一変した」(官邸幹部)。3月には政府が初めて「電力需給逼迫(ひっぱく)警報」を出した。日本はサハリン事業などを通じてロシア産資源に依存している。電力供給不安が国民の間でも意識されるようになり、経産省内からは「原発について冷静に議論できるようになるかもしれない」という声が出始めた。
「このままではエネルギー危機に陥る。急ぎ原発の議論を」。サハリン事業から日本が締め出される懸念が広がった6月、経済官庁のある幹部は首相にこう進言した。首相側近は「いつまでも再生エネでやっていけるという妄想を国民に与え続けるのは、責任ある姿ではない。ウクライナ危機によって現実を語らなければいけなくなった」と話す。
そして7月。10日投開票の参院選に勝利すると、官邸が動く。
首相はまず、7月14日に首相官邸で記者会見。深刻な電力不足が見込まれる今冬の電力供給不安を理由に最大9基を稼働させると強調した。実は電力関係者の間では、この9基は点検後の冬に稼働予定の織り込み済みの話。あえて「ニュース」として打ち出すことで、世論の反応を探る狙いがあった。
首相はさらに打って出る。7月下旬のGX実行会議で官僚らに原発を例示した上で「政治決断が求められる項目を明確に(私に)示してもらいたい」と指示。原発を所管する経産省幹部でさえ「寝耳に水」のサプライズだった。
不人気政策は「年内」に
ただ、8月に入ると、政権の支持率は下落。20、21両日に毎日新聞と社会調査研究センターが実施した全国世論調査で内閣支持率は前回調査(7月)から16ポイント減の36%まで下がり、報道各社の調査でも軒並み下落した。それでも官邸は「批判を浴びても進めなければならない」(首相側近)と決断。当初の予定通り、首相は24日に原発回帰を打ち出した。支持率急落にもかかわらず表明に踏み切ったのは、年末までのこの時期が「不人気政策に向き合える数少ないチャンス」(閣僚経験者)でもあったからだ。
衆院選と参院選を終え、…
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