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東京電力福島第1原発事故から11年半。放射性汚染水を浄化した処理水について、東電は早ければ2023年春にも海への放出を始める予定だ。だが地元の漁業者や海外の不信感は根強く、放出完了までの道のりははるかに遠い。
今夏、処理水を巡る大きな動きがあった。原子力規制委員会が7月22日、処理水を海洋放出する東電の計画を認可したのだ。
それによると、まず技術的に取り除くのが難しいトリチウム以外の63種類の放射性物質の濃度を国の基準値未満に下げる。さらに海水で薄め、トリチウム濃度が基準値の40分の1(1リットル当たり1500ベクレル)未満になるよう調整。沖合約1キロの海底に放出する。
8月2日には立地自治体の福島県と大熊、双葉町が、放出設備の工事開始を事前了解すると東電に伝え、東電は設備を本格着工した。シールドマシンで海底トンネルを掘削し、処理水を移送する配管を敷設している。
だが工期は早くも遅れぎみになっている。海底に放水口のケーソン(コンクリート製の箱)を設置する作業は8月中を予定していたが、天候などの影響で9月以降に延期された。東電は、放出が来夏にずれ込む可能性も示唆している。
汚染水「ゼロ」目標は撤回
処理水のもとになるのが、高濃度の放射性物質を含む汚染水だ。原子炉の冷却水や地下水などが、溶け落ちた1~3号機の核燃料(燃料デブリ)に触れて発生する。
これを多核種除去設備「ALPS(アルプス)」などを使って、トリチウム以外の放射性物質を取り除いたものが処理水だ。
東電は処理水をためるタンクを急ピッチで増設してきたが、水は今年3月時点でタンク容量の95%(129万トン)に達している。廃炉作業に必要なスペースを確保するため、これ以上の増設は難しい。このままでは23年夏から秋にも満杯になる見込みだ。
急務なのは、汚染水の発生を防ぐことだ。
1~3号機は建屋が大きく壊れている。敷地の山側から流れ込む地下水や雨水が建屋内に入り、汚染水を増やす要因になっている。
東電は、建屋周囲の井戸から地下水をくみ上げたり、地下を凍らせて建屋を囲う「凍土遮水壁」を作ったりして建屋への水の流入を減らしてきた。21年度の1日あたりの汚染水の発生量は130トンと、15年度の4分の1に下がった。
だが、いまだに水がどこから入ってきているのか、東電自身も把握できていない。東電が当初掲げた「汚染水の発生ゼロ」の達成はめどが立たず、「25年までに1日100トンまで減らす」と目標を差し替えた。
実は処理水の大半が「処理途上」
設備が完成すれば、タンクの水は海洋放出できるのか。
今年3月時点で129万トンあるタンク内の水のうち、アルプスで処理していない水は1万トンと1%以下にとどまる。東電はそれ以外の水を「処理水」と説明してきた。
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