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「夕立」という言葉には趣を感じますが、近年は情緒も何もあったものではない「ゲリラ豪雨」ばかりになってきた気がします。今回はこの夏、ある聖地での取材中にものすごい雨に見舞われたお話を紹介します。【大阪学芸部・花澤茂人】
8月4日、天台宗の総本山・比叡山延暦寺(大津市)にいた私は、不安な思いで黒い雲を見上げた。「世界宗教者平和の祈りの集い」の式典の開始が迫る中、今にも降り出しそうな空模様だった。会場の広場には特設の屋根があったが、約500人の参加者を雨から守るにはいささか心もとない。
「祈りの集い」は1987年8月の「比叡山宗教サミット」以来の恒例行事。その前年、当時のローマ教皇ヨハネ・パウロ2世が世界の宗教者をイタリアの聖地アッシジに招いて共に祈った精神を受け継ぎ、「日本仏教の母山」とも呼ばれる比叡山を舞台に開催された。35周年となったこの日は「気候変動と宗教者の責務」がテーマで、午前に京都市内でシンポジウム、午後に比叡山で式典というスケジュールだった。
午後3時過ぎに式典が始まって間もなく、不安は的中した。舞台上で仏教、神道、キリスト教などの若手たちが、宗教者の行動指針などをまとめた35年前の「比叡山メッセージ」を読み上げていたさなか、「バシャーン」と付近に落雷。ファインダーをのぞき込んでいた私は不意の雷鳴に腰が抜けかけた。ほぼ同時に豪雨が降り始め、落雷もひっきりなしに続く。吹き込む雨で手元の資料やノートが無残にぬれた。
しかし式典は続いた。土砂降りの中、98歳の大樹孝啓(おおき・こうけい)天台座主が傘を差し掛けられながら舞台上へ。…
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