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性暴力は人権侵害である。許すことはできない。これを機に徹底的な調査で問題を洗い出し、厳正に処分しなければならない。
浜田靖一防衛相が、全自衛隊員を対象に、性暴力などのハラスメント根絶に向けた特別防衛監察を実施するよう指示した。防衛相の直轄組織で、元検事長をトップとする防衛監察本部が独立した立場から調査する。
きっかけは、元女性自衛官の五ノ井里奈さんが、退職した今年6月以降、インターネットなどで性暴力を告発したことだ。
所属していた陸上自衛隊の駐屯地で、男性隊員から集団で性被害を繰り返し受けていたという。陸自は、男性隊員の一部を強制わいせつ容疑で書類送検したが、不起訴処分とされた。
五ノ井さんがネット上で情報提供を呼びかけたところ、自衛隊内でのハラスメント被害を訴える声が146人から寄せられた。8月には、第三者による公正な調査を求める10万筆以上の署名を防衛省へ提出した。
浜田氏は記者会見で、五ノ井さんの事案に関わった男性隊員について、監察本部が改めて調査する方針を示した。
だが、これまで問題を放置してきた防衛省の責任は重い。
近年、女性自衛官の登用を進めているが、依然として男性が自衛官全体の9割超を占める。
階級による「縦社会」と外部の目が届きにくい環境の中で、ハラスメントが起きやすい風土が指摘される。
実際に、防衛省の窓口に寄せられた相談件数は、2021年度に2300件を超え、5年前の10倍近くに急増している。女性隊員に対する性暴力だけでなく、男性隊員同士のいじめ、パワハラなども少なくないとみられる。
このため防衛省は、これまでの相談への対応を緊急点検し、ハラスメント対策を抜本的に見直すための有識者会議も設置する。
特別防衛監察の実施は、17年に南スーダン国連平和維持活動(PKO)を巡る日報の存在が隠蔽(いんぺい)されていた問題以来となり、極めて異例だ。
ハラスメント問題でも隠蔽がなかったかどうかを含めて、しっかりと検証しなければならない。