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言うことを聞かないと、ホースで殴られた。母の日に贈ったカーネーションは受け取りを拒まれた。宗教にのめり込んだ母は、祝い事を「悪魔のわな」だと信じていた。子どもとして当たり前のことができない日々は、幼心に深い傷を残した。
安倍晋三元首相の銃撃事件をきっかけに、親の信仰の影響を受けて育つ「宗教2世」の置かれた状況に注目が集まっている。自らも宗教2世である京都府立大の横道誠准教授(43)は当事者同士で悩みを共有し、支え合う自助グループの会を主宰しているが、宗教2世に公的支援が届きにくい現状を訴えている。なぜなのか、その実態を探った。
友達作れず、武道の授業は欠席
8月上旬、オンラインで開かれた自助グループ「宗教2世の会」。事件で逮捕された山上徹也容疑者(41)の母が信仰し、計1億円を献金して破産した世界平和統一家庭連合(旧統一教会)だけでなく、さまざまな宗教の2世8人が集まった。
キリスト教系の新宗教に親子で入信していた男性は子どもの頃、「争いは避けなければいけない」という教義のために、武道の授業を受けられなかった。「この世に意味はない」として友達も作らないように教え込まれ、孤独な日々を過ごした。
祖父母の代から仏教系の新宗教に関わる女性は、幼い頃から読経をしないとご飯を食べさせてもらえなかった。成人した今でも、悪いことが起きると「信仰が足りないからだ」と自分を呪ってしまう生きづらさを語った。
横道さんも心に傷を抱える一人だ。幼少期、父と母は夫婦げんかが絶えず、父は家に帰ってこなくなった。7、8歳の頃、母はその心の隙間(すきま)を埋めるように、キリスト教系の新宗教に入信した。
横道さんは成人してから注意欠如・多動症(ADHD)や自閉スペクトラム症(ASD)を併発していると診断されたが、子どもの頃からじっと座っていることが苦手だった。母は、そんな横道さんを集会に連れて行き、動きたくなる衝動を抑えつけて聖書を読ませた。
その宗教では、子どもが親に従わないなら暴力で矯正すべきだとの教えがあった。母の言うことを聞かないと2~3時間正座をさせられ、ガスのホースで殴られたことも度々あった。体罰の後は必ず、「お前を愛しているからだ」と抱きしめられた。「それが一番しんどかった。消えてしまいたいと思っていた」と横道さんは振り返る。
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