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英新首相にトラス氏 欧州結束への責任は重い

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 英国の新首相にトラス氏が就いた。ロシアのウクライナ侵攻後、欧州主要国での首脳交代は初めてだ。欧州の結束が求められる中、国際的指導力に期待したい。

 前任のジョンソン氏は新型コロナウイルス流行下の不祥事で批判を浴び、辞任した。トラス氏は保守党党首選でスナク前財務相を破り、サッチャー、メイ両氏に続く3人目の女性首相となった。

 党首選では、富裕階級出身のスナク氏を意識し、庶民性をアピールした。ジョンソン氏に反旗を翻したスナク氏とは対照的に、外相として最後まで政権を支えた。

 英国は40年ぶりの物価高に見舞われている。トラス氏は大規模減税などで国民生活や企業活動を支える必要性を訴える。

 就任直後、「嵐を乗り切る」と述べ、早期に公約を実行し経済を再建する決意を表明した。

 ウクライナ危機では、対露強硬路線を維持する姿勢を示している。ただ、長期化に伴い、欧州内では足並みの乱れも出ている。

 ロシアへのエネルギー依存度が低い英国は、制裁を強化すべきだとの立場をとる。一方、天然ガスなどを多く輸入するドイツや東欧諸国は慎重で、プーチン露政権と近いハンガリーは反対している。

 エネルギー需要の高まる厳冬期に向け、ウクライナ政府に早期停戦を促す声が強まる可能性もある。いかに欧州の結束を維持するかが、課題となる。

 不安材料は欧州連合(EU)との関係がぎくしゃくしていることだ。ジョンソン前政権はEU離脱協定を一方的に変更する法案を議会に提出した。トラス氏はこの方針を踏襲している。

 「EUとの関係をさらに困難にしてもらいたくない」。フランスのロワゾー元欧州問題担当相はツイッターに投稿した。EU諸国の懸念の表れだろう。

 英国は国連安全保障理事会常任理事国として、国際社会の安定に特別な責任を負っている。議会制民主主義の母国としてこれまで、協調重視の姿勢が国際的にも評価されてきた。

 ロシアや中国などが権威主義的な行動を強める中、英国の役割はより重要になっている。欧州と世界の安定に貢献できるか、新首相の実行力が試される。

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