依存症に苦しむ女性たち 成功体験の積み重ねで自信 共同生活で支援

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NPO法人「リバティー・ウィメンズハウス・おりーぶ」の理事長、山本良子さん=大津市で2022年8月22日午後2時7分、井手千夏撮影 拡大
NPO法人「リバティー・ウィメンズハウス・おりーぶ」の理事長、山本良子さん=大津市で2022年8月22日午後2時7分、井手千夏撮影

 NPO法人「リバティー・ウィメンズハウス・おりーぶ」(大津市)は、女性がさまざまな依存症から立ち直るのを手助けしている。アルコールや薬物などの依存症は自己責任論が強いが、理事長の山本良子さん(71)は「自己の問題だけではない。生まれ変わろうとするのはとても意味があること」と語る。【まとめ・井手千夏】

 依存症とは依存対象物や行動にのめり込み、だめだと分かっていてもやめられない状況のことです。アルコールや薬などの「物質依存」と、ギャンブルや買い物、摂食といった「行為依存」の大きく二つに分けられます。人に強く依存する「共依存」もあります。

 依存症になるのは真面目で責任感が強く、自己肯定感が低い人が多いです。家庭や職場、ママ友たちへのストレスやプレッシャーに対し「ちゃんとやらなきゃ」と強く思い、何かにすがろうとしたり、一時的な快楽を求めたりします。近年はコロナ禍で家で過ごす時間が増え夫婦関係がうまくいかなかったり、雇用問題があったりして酒や薬に逃げる人が多いように感じます。

ホームで築く人間関係

 子どもの頃、私の母は教育熱心でした。「これはおかしい」と作文や絵を何度も書き直されました。母に悪気はなかったのですが、私は爪をかみ自分で髪を抜いていました。知らず知らずプレッシャーを感じていたんだと思います。さらに前夫はアルコール依存症でした。いずれも精神的にしんどい経験でした。この経験から「同じような立場の人の助けになりたい」と精神保健福祉士の資格を取得しました。

 依存症に苦しむ女性の相談室を設けましたが、継続的支援が必要だと気づき、2012年に「リバティー・ウィメンズハウス・おりーぶ」を設立しました。

 現在は回復施設として大津市内に4カ所のグループホームがあり、それぞれ4、5人で共同生活しています。年代は18歳~50代前半です。半数は眠剤や安定剤などの処方薬依存、一部は摂食障害やアルコール依存、ギャンブル依存などの女性です。入所者の中には、常日ごろからもめ事が絶えない家庭で育ち、処方薬の過剰摂取に陥った女性や、児童養護施設卒業後に大麻使用で少年院送致となり、周りの気を引くためにリストカットや行方をくらますといった行為をする愛着障害の女性などがいます。

 ホームでは自分たちでご飯を作り、洗濯や掃除もします。「疑似家族」です。ここに来る人は人間関係が破綻している人が多く、料理を教え合ったり、けんかをしたり、一緒に暮らすことで人間関係を築き上げます。昼間はデイセンターで言いっぱなし・聞きっぱなしのミーティングや運動、手芸などをしています。

 依存症になった環境や対象から距離を置き、共同生活を送りながら生活リズムを整え、対人関係の構築や体質改善など、再び社会に出て行くための準備をします。

 彼女たちと接する時は教える立場ではなく仲間だと思うようにしています。酒や薬を取り上げるだけでは刑務所と変わりません。ここでは今までできなかった料理や掃除、アルバイトができるようになったり、小声でも意見を主張できたり、当たり前に見えるかもしれませんが、小さな成功体験の積み重ねで彼女たちは自信や勇気を持つことができます。

 中には焦って「すぐに仕事に行きたい」「早くホームを出て行きたい」という人も多くいます。それは止めません。口でだめだと言うのではなく、仕事から1時間で戻ってきたり、ホームに再び帰って来たり、「焦ってもよくない」と本人に気付かせることが大事だと思っています。

助けてと言える社会に

 「ストレスがないのを望むな」とよく伝えています。ストレスを回避し、乗り越えるためのやり方を変えるのです。行き先への電車を乗り間違えたら乗り換えるのと同じです。つまらない悩みだと思わないでまずは困っていることを伝えてください。決して恥ずかしいことではありません。

 日本特有の「恥の文化」で人に相談できず問題が形になって表れないことも課題です。「依存症は自己責任だ」「頑張らなかったのが問題」など自己責任論が強いことも相談しにくい状況や支援の輪が広がりにくい環境を作っています。依存症は誰でもなり得る病気です。人ごとではありません。自己責任論を押しつけたり、特殊な人だと思ったりしないでください。社会が依存症を理解し、「助けて」と声を上げられる世の中になってほしいと願います。

NPO法人 リバティー・ウィメンズハウス・おりーぶ

 2012年設立。共同生活をしながら各種依存症からの回復を目指す女性を支援する。当事者の家族やパートナーが集う家族会「もくせいくらぶ」もある。寄付も受け付けている。大津市南小松1594の357。電話(077・535・0313)。ホームページ(https://stephouseolive.com/)。

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