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ALS患うニャンちゅう声優「社会と接点持つことが対症療法」

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自宅でパソコンの画面を見ながらニャンちゅうの声を収録する津久井教生さん=2022年7月5日(本人提供)
自宅でパソコンの画面を見ながらニャンちゅうの声を収録する津久井教生さん=2022年7月5日(本人提供)

 30年にわたりNHKの人気キャラクター「ニャンちゅう」の声を担当してきた声優の津久井教生さん(61)。3年前に全身の筋肉が徐々に動かなくなる難病「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」と診断され、自力で体を動かせない状態の中で自宅で収録し、出演を続けてきた。難病に苦しみながらも声優を務めていることや、難病患者とその家族を支えるための共生社会などについて、書面インタビューで思いを聞いた。【桐野耕一】

 ――ALSの診断を受けるまでの経緯を教えてください。

 ◆2019年3月、収録スタジオに向かう途中の何でもないゆるい坂道で派手に転び、体にハッキリとした違和感を感じました。それ以前も足が上がりにくいと感じたことはありましたが、加齢のせいと思っていました。声優以外に演劇の舞台も継続的に出演し、運動神経には自信があったので、派手に転んだ時は大きな違和感でした。

 かかりつけ医から紹介を受けた整形外科で経過観察となり、そこで治療をすることができない可能性が濃厚となったため神経内科に移りました。難病の重症筋無力症などの可能性があると判断されて大学病院を紹介され、8月から1カ月弱検査入院してALSと診断されました。確定診断を受けるまでの病状の進行は速く、違和感を覚えてから半年でほぼ自力で歩けなくなり、腕も肩より上がらなくなりました。

くわえた割り箸で文章入力

 ――ALSと診断され、どのように感じましたか。

 ◆「病名が分かってホッとした気持ち」が一番強かったです。検査によって消去法で病名が消えていく中、可能性として残された病名を見ると厄介な病気であろうという不安感もありました。しかし病名が分からない方が、はるかにストレスでした。家族も病名はショックだったと思いますが、しっかりした診断が出て、その病気に対して私と闘病できることにホッとしてくれました。それほど急激な体の異変に見舞われたのだと思います。

 声優を育成する専門学校の講師なども務めていたので、闘病しながらどのように仕事をしていくか事務所や仕事先とも話し合いました。「やれるだけやりましょう」と言っていただき、病気のことを公表して「ALSと生きる」と決め、自身のブログで報告しました。

 20年5月には指先に力が入らなくなり、ウクレレも弾けなくなりました。食事を食べさせてもらい、寝返りもできなくなりました。21年3月には自分でできることはほぼなくなり、8月から重度訪問介護の利用を始めました。

 今年に入るとほんの少し反射のように動いていた指が徐々に動かなくなり、パソコンのマウスを左右それぞれ持ち操作するよう工夫しました。文章を書く際は口に割り箸をくわえ、その割り箸でパソコンのキーボードを押して入力しているのですが、入力スピードも半減しました。たんもうまく飲み込めなくなり、たん吸引器を使用することになりました。

6時間以上かけてリモート収録

 ――ニャンちゅうの声はどのように収録しているのですか。

 ◆発症後、今年4月まで車椅子でスタジオに行って収録していたのですが、体調面よりも新型コロナウイルスの感染予防のため自宅での録音になりました。…

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