書評ユーチューバー・スケザネさん 文学は「役に立ち、面白い」
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ユーチューブなどの動画投稿サイトで本の情報を発信する人は少なくないが、その中でも異色の存在感を放つのが「スケザネ」こと渡辺祐真さん(30)だ。おすすめの本の紹介にとどまらず、作家へのインタビューや書店探訪、文学展のガイドツアーなど、工夫をこらした動画を次々と発表。「スケザネ図書館」と銘打ったユーチューブチャンネルの登録者数は約1万4000人に上る。初の単著「物語のカギ 『読む』が10倍楽しくなる38のヒント」(笠間書院)を刊行した渡辺さんに、活動の原動力と読書のコツを聞いた。【関雄輔】
動画で書評を親しみやすく
渡辺さんは東京都内のゲーム会社でシナリオライターとして働く傍ら、「書評系ユーチューバー」として活動している。知人の動画への出演をきっかけに映像メディアに興味を持ち、2020年末に自身のチャンネルを開設した。書評を親しみやすいものにしたいという思いがあり、動画なら若い世代にも届くのではないかと考えた。
当時、既にユーチューブで本の紹介をする人は珍しくなかったが、特定の作家やテーマに沿った特集や、歌人の俵万智さんや作家の小川洋子さんへのインタビューなど、見ごたえのある動画の数々でコアな文学ファンの心もつかんだ。最近は紙媒体での仕事も増え、ユーチューバーとしてだけでなく、新鋭書評家としての地歩を固めつつある。
読解のカギは多様な視点と知識
このほど刊行した「物語のカギ」は、読書ガイドであり、「物語」論とも言える一冊だ。太宰治の「走れメロス」やゲーテの「ファウスト」から、小津安二郎の映画、人気漫画「呪術廻戦」まで、古今東西の作品の読解を通じて物語をより深く味わうコツを紹介している。
高校生の頃、物語を「上手に読める」人に憧れていたという渡辺さん。「当時の自分も含め、小説などの物語の読み方、楽しみ方が分からないという人は少なくないのでは」と語る。
読書家の友人の影響で、本格的に本を手に取るようになったのが中学3年の時。一編の物語からさまざまな解釈を披露する友人に比べ、「何となく面白いとか、つまらなかったという感想しか言葉にできないのがもどかしかった」と振り返る。
大学で文学部に進み、…
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