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「同性婚は誰も困らない」法廷に響いた性的少数者たちの切実な声

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1審・札幌地裁で違憲判決を勝ち取り、手を取り合う原告カップル=札幌市中央区で2021年3月17日、貝塚太一撮影
1審・札幌地裁で違憲判決を勝ち取り、手を取り合う原告カップル=札幌市中央区で2021年3月17日、貝塚太一撮影

 同性と結婚できないことは合憲か違憲か――。札幌高裁で当事者と国が係争中の「同性婚訴訟」で、当事者が公開の法廷で裁判官や傍聴者を前にしながらも、ひるまずに「意見陳述」として本音を吐露する場面がある。35歳男性の記者(私)はLGBTQなどの性的少数者(マイノリティー)に理解があると「思い込んでいた」。だが、実は「無関心」だったと思い知らされた。日常的な接点が薄ければ、このような錯覚に陥りやすい。当事者の覚悟がにじむ陳述の一部を紹介するので、思いをはせてほしい。

初の違憲判決を下した札幌地裁

 この訴訟は、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、13組の同性カップルが2019年2月に、全国4地裁(札幌、東京、名古屋、大阪)で国家賠償請求訴訟を一斉に起こしたというもの。その後、福岡地裁などでも提訴があった。同性婚が認められる社会を目指すNPO法人「EMA日本」(東京都)によると、日本は同性婚が認められていないが、世界の32の国と地域(22年7月時点)は認めている。G7(主要7カ国)で同性婚やそれに準じる法的権利を認める制度を設けていないのは日本だけだという。

 一連の訴訟で最初に判決を言い渡したのが、3組6人の当事者が原告となった札幌地裁だった。21年3月の判決で武部知子裁判長は、同性愛が自らの意思で選択や変更ができない個人の性質で、婚姻による法的効果を受けられないのは「法の下の平等」を定めた憲法14条に違反するとの判断を初めて示した。

 一方、「婚姻は両性の合意のみに基づいて成立」とある憲法24条は「異性婚について定めたもの」として、現行制度が24条に反していると言えないと結論付けた。原告側は主張の全てが認められたわけでなく、国の制度改正を促したいとして札幌高裁に控訴し、いまに至る。

 控訴審は21年12月に始まり、これまでに原告4人が意見陳述した。その内容で、当事者の現実や本音をうかがい知ることができる。原告の一人である国見亮佑さん(仮名)は、パートナーと約20年間交際し、04年から北海道内で同居中だ。国見さんは控訴審の第1回口頭弁論で両親が傍聴席から見守る中、裁判官に訴えかけた。

「20年近く連れ添っても法的には他人」

 「私たちは婚姻した異性愛者のカップルとなんら変わりのない暮らしをしています。…

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