連載

坂村健の目

東洋大情報連携学部(INIAD)の坂村健学部長が科学の視点でつづるコラム。

連載一覧

坂村健の目

原子力 ドイツの変わり身の早さ 今こそまねるべきだ

  • ブックマーク
  • 保存
  • メール
  • 印刷
2021年末に稼働を停止したグンドレンミンゲン原発=独バイエルン州で2021年12月29日、ロイター
2021年末に稼働を停止したグンドレンミンゲン原発=独バイエルン州で2021年12月29日、ロイター

 ウクライナ侵攻に始まったエネルギー危機をきっかけに、東京電力福島第1原発事故で議論が止まっていた原子力への「回帰」が世界的に進んでいます。「日本はドイツの姿勢をまねるべきだ」と坂村健・東洋大INIAD学部長は訴えます。どういうことなのでしょうか。

 世界がエネルギー危機だ。特にウクライナ侵攻に対するロシアへの経済制裁と、その報復によるドイツのエネルギー危機がひどい。今年の冬を乗り切るため、環境政党の「緑の党」から率先して石炭火力の再活用を言い出しているし、長期的にも「原子力はクリーン」と方針を180度変えている。

 「○○では……」と、何かにつけて海外の事例を引き合いに出す人を「出羽守(でわのかみ)」と呼ぶ。「ドイツでは再生可能エネルギーで国が維持できている。日本は遅れている」などがその例だが、現状を見ると疑わしい。それが本当であれば、そもそもロシアの天然ガスなど拒否できたはずだろう。

 ドイツは1998年に緑の党が連立政権入りしたとき「脱原子力」と「再生エネ拡大」を基本政策とした。しかし不安定な再生エネを補完し安定化するためとして2011年には原子力の延長を決断。その直後に起こった東京電力福島第1原発事故で、脱原子力にかじを切り戻し、22年までに脱原子力完了と決めたら、今度はウクライナ侵攻だ。間が悪いとしか言いようがない。

 「そら見たことか」と言うのはたやすい。しかし、…

この記事は有料記事です。

残り713文字(全文1306文字)

あわせて読みたい

マイページでフォローする

この記事の特集・連載
すべて見る

ニュース特集