課題克服の源はダブルチーズバーガー 業師・宇良のこだわりとは

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初の三役昇進を狙う宇良。体重増の試みが白星につながるか=東京・両国国技館で2022年5月15日、前田梨里子撮影
初の三役昇進を狙う宇良。体重増の試みが白星につながるか=東京・両国国技館で2022年5月15日、前田梨里子撮影

 大相撲で初の三役を目指す角界きっての業師は「体を大きくする」という長年の課題にようやくめどをつけた。西前頭3枚目の宇良(30)=木瀬部屋=は関西学院大の学生だった10年前は65キロだった体重が80キロ以上も増加。その裏には異色の食生活があった。

体重150キロ突破「限界を迎えたかな」

 7年半前の初土俵の頃でも110キロ台前半だった体重は、秋場所前の検査で151キロと大台を超えた。

 「自分の身長からしても、限界を迎えたかなとは思います。勝てないのは体重のせいではない、と思える体重になりましたね」

 学生時代から素早い動きで多彩な技を繰り出し、足取りや相手の両膝を抱えて押し上げて反って倒す「居反り」で話題を集めた。角界入り後は200キロ前後の大きな相手との取組が増え、得意の反り技で負担のかかった膝を負傷し、2度の手術を経験した。

 「けがさえなかったら、ここまで体を大きくする必要はなかったかもしれない。(けがの影響もあり)昔のようには動けない。ほかで補わないといけない」と決意し、所属部屋でのちゃんこに加え、間食や夜食も意識してとるようにした。

効率良くたんぱく質を摂取

 重宝したのは、マクドナルドのダブルチーズバーガーだ。効率良くたんぱく質を取れるとして、口にすることが多かったという。ファストフードの過剰な摂取には否定的な声もあるが、「肉をパンで挟んでいる、ただそれだけのことです。中にチーズとか入って……。(批判されると)言い返してしまうところがある」と力説したこともあった。

 角界では「食べるのも稽古(けいこ)」と言われる。本来は小食だという宇良は「(ハンバーガーを)おいしくいただいているんですけど、おなかが減ったから食べようと思って食べているわけではない」と言う。

 2020年11月場所で2年10カ月ぶりに十両への返り咲きが決まった際は、悩める胸の内を明かした。

 「体重を増やしたのも良かった。(押されても)動かない、どっしりした相撲をとれたらと思って(増量を)やっていた。自分は結構何もかも犠牲にして食べて、体を増やしていたつもりだった。でも、なまけて太ったように思われて……。そういうのはつらかった。結構食べるのは苦手。無理してやっていた」

狙うは初の三役「稽古で番付上げる」 

 体が大きくなった今、小結や関脇といった三役を狙える平幕上位に定着しつつある。7月の名古屋場所は西前頭3枚目で7勝8敗と負け越したが、秋場所は同じ番付にとどまった。周囲の期待は高まっているが、本人は戸惑いも隠せない。

 「『三役が見えてきた』と言われるようになったけど、まだ気持ちがついていっていない感じもあります。ちょっと前まで(幕下以下に)落ちていたのに……。相撲内容では、まだ力がないのは露呈している。地力のある人は上位、三役で安定している。僕みたいな、おこぼれでちょっと狙っているくらいでは……。稽古して、実力とともに番付を上げられたらいいなと思っている」

 冷静に、そして厳しく自らの力量を受け止める。

 もちろん闘志は燃やしている。「勝負に徹するという意味では、小細工は悪いことではない。それこそ、勝ちにいきますよ。どんな手を使ってでも。(三役も)目指しますよ」と謙虚な言葉から一転、強い意気込みも口にするのは、相手を惑わす取り口にも重なる。

 体重が増えたことで、ダブルチーズバーガーの頻度は減った。最近はコンビニエンスストアのヨーグルトや卵焼きでたんぱく質を摂取するようにしているという。

 「休場とかちょこちょこするので、自分にとっては15日、完走するのが当たり前じゃない。生き残れるように頑張りたいですね」

 自己最高位は今年3月の春場所の西前頭筆頭。当時は4勝11敗と負け越し…

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