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地球温暖化の影響が顕著になっている。世界各地で深刻な熱波や干ばつ、洪水が相次ぐ。専門家の分析では、温暖化によって異常気象の発生確率が高まっている。
米海洋大気局(NOAA)などによると、大気中の二酸化炭素濃度が、昨年の年間平均で過去最高を記録した。海水面は1993年より9・7センチも上昇した。
にもかかわらず、脱炭素化に向けた国際社会の歩みは、停滞している。
ロシアのウクライナ侵攻が影を落とす。先月開かれた主要20カ国・地域(G20)の環境・気候相会合は、ロシアを非難する文言を巡って意見がまとまらず、共同声明を採択できなかった。
エネルギー危機も深刻になっている。ロシア産天然ガスの供給減と、それに伴う化石燃料の価格高騰が原因だ。脱炭素を先導してきたドイツも、温室効果ガスの排出量が多い石炭火力発電所の稼働を増やす。
ウクライナ危機は、化石燃料の調達を海外に頼ることのリスクを浮かび上がらせた。エネルギー安全保障の観点からも、脱炭素を進める必要がある。
欧州は、再生可能エネルギーを今後の主力電源とする方針は変えていない。一方、日本では、原発依存へ逆戻りするような動きが出ている。岸田文雄首相は、新増設の検討を指示した。
しかし、原発を新たに建設するには、10年以上の時間と巨費を要する。電力逼迫(ひっぱく)をすぐに解消できるわけではない。
今やるべきことは、欧州の周回遅れとなっている再生エネのさらなる導入や、建物の断熱性の向上などだ。
当面は、人々の暮らしを守るためにエネルギーを確保しつつ、中長期的には脱炭素化を目指す。日本を含む先進国には、明確な方針を示すことが求められる。
国際協調も欠かせない。化石燃料への依存度が高い新興国、途上国などが、脱炭素に取り組めるよう支援することも重要だ。
11月には、エジプトで国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)が開かれる。脱炭素の重要性は揺るがないことを、参加各国が再確認する場にしなければならない。