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いつか私のことも忘れてしまう――。3年前、夫が若年性認知症と診断された妻にこみ上げたのは、自分の存在が夫の中から消えてしまうのでは、という不安だった。
絶望を乗り越え、重ねた歳月。夫は趣味の写真や同じ認知症を持つ人との交流を通じ、「2人で過ごした記憶は決して消えない」と確信するようになった。9月21日は「世界アルツハイマーデー」。かけがえのない「今」を生きる夫婦の物語を紹介したい。
目の前が真っ暗に
京都市北区に住む下坂厚さん(49)が「若年性アルツハイマー型認知症」と診断されたのは2019年8月。仲間と起業したばかりの鮮魚店で注文を忘れたり、同僚の名前があやふやになったりしたのをきっかけに、医療機関を受診した。
当時46歳。「目の前が真っ暗になった」。衰えていく姿を仲間に見られたくなくて、すぐに「月末で辞める」と退職を申し出た。ただ、妻の佳子(よしこ)さん(57)にどう伝えればいいのか迷っていた。
佳子さんは、たまたま自宅に置いてあった脳の検査書類を見つけた。厚さんに尋ねると、外食に誘われて「実は……」と打ち明けられた。…
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